終わりの始まり


暗闇の中で、うっすらと意識が戻ってきた。


…何が、あったんだっけ。


薄く目を見開くと、そこはやっぱり暗闇で、ここはどこなんだろうとぼんやりと考える。

身体がやけに重い。
知らない間に勝手にまた瞼が落ちて、すっと意識だけが上に昇っていくような、不思議な感覚。
からだはどんどん重くなっていく。
…このまま、意識や感覚と肉体が離れ離れになってしまった時、人は死ぬのだろうか…

人間は、…俺は、死んだらどこに行くんだろうか

………

………って、何この思想!
俺、怖っ!

「うおおお死んでたまるかあ!」

叫び声を上げながらガバッと起き上がって、ふるふると首を振る。ちょっとフラフラしたけど、おかげで少しだけ感覚が戻って来た。

…あぶねえ、俺、今一瞬死にかけてた!瀕死だった!

急に心臓がドクドクと太鼓のように俺の胸を打って、ああ生きてるんだと安心する。

…で、ここはどこなんだろう…
そう思ったと同時に、急にぽつりと部屋の真ん中に明かりが点されて、目が無意識にその明かりを追った。




…そして、目覚めなきゃ良かったと思った。





「…おはよう、河合総一君」
「ギャアアアアアアアアア」


暗闇の中に、化けも…のろい君の顔がぼんやりと浮かんでいた。
一瞬生首かと思ってぎょっとしたが、良く見たらペンライトで顔を照らしているだけだった。
…古典的な罠にひっかかってしまったっていうかそれにしても怖すぎるわ!

「生きていたか…」

のろい君が眉を寄せて、唇を歪ませる。怒っているのか演出なのか、ペンライトを持つ腕が震えて、暗闇の中でゆらゆらとのろい君の顔が揺れている。
やばいマジでこわい!!!
ていうかその台詞おかしくない!?生きてちゃ駄目でしたか!?

「え、えっと、ここ、どこですか、なんでのろい君が…」

「…此処は俺の部屋。小澤君と交代で、君の最期を見届けている最中だった」

ちょ、だからおかしいだろ俺生きてるよ!どうしても俺を殺したいのかよ!
…って、何で俺のろい君の部屋に?のろい君の部屋からは俺逃げ…あ。

思い出した。

俺、404号室から逃げて部屋に戻ったんだ。
そしたら、何故か変人が部屋に居て、変態の限りを見せつけられて、更に他の生徒にまでそれを見られちゃったんだ。

「や、やっば…うわ…えええ…」

「…部屋には戻るなと言った。」
「ど、どうもすんませんでした…」
「……………」

妙な空気が部屋に流れる。
誰か助けて、と強く願った時、俺の思いが神に通じたのだろうか?部屋の扉が勢い良く開けられた。

「河合くぅうん!!」

「小澤君ーーー!!!!」

強く願えば、夢はきっと叶う。
俺は、頑張る人を応援します。


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