はじまりの


ーーーーー

届くはずのない恋だと
わかっていながら
どうしても抑え切れなくて
手紙を書いた


こんなにも愛してるって

貴方に、

今、

伝えたいー…




『ラブレター』



※秘密のお話があります、放課後屋上に来て下さい。
3年D組 成瀬 麗緒
ーーーーー


「手紙かよ!!」

どっかの携帯小説のプロローグかと思ったわ!

この学園に入学して、2ヶ月とちょっと。
下駄箱の前で、うっかり叫んでしまった俺、河合総一。
そら、叫びたくもなるわ、朝っぱらからこんな手紙が下駄箱にぶち込まれてたら。
趣味の悪い色鮮やかすぎる柄の便箋封筒は、幾何学すぎる模様なのにどこか見覚えがある。

…そうだ!
この模様は昔流行った3Dだ。
小学生の時図書室で取り合いになったアレだ。

まさか何か文字が浮き出てくるのかとうんざりしながらも目を凝らしたら、趣味の悪い柄が中途半端にぷっくりと浮いただけだった…歯痒さが増してイラッときた。

一体これは何の嫌がらせなんだろうか。

どうやら3年D組の成瀬麗緒さんの仕業らしいが、俺にはこんな嫌がらせをされる理由が全然思いつかない。

3年と1年はまず棟が違うし、廊下で擦れ違う可能性は低い。
会う可能性が高いのは学食だが俺は入学してから一度しか学食を利用した事がない。
…嫌がらせをされる理由どころか、きっかけすら思いつかない。
もしかしたら人違いかもしれないと思いもしたが、封筒にはしっかりと俺の名前が書かれている。


「えええ何だよこの手紙…演出っぽい改行が気味悪いよ…ていうか何より『伝えたいー…』の『ー…』の表現がすげえ腹立つし『ラブレター』ってタイトルみたいになっちゃってるし見りゃわかるよいやわかんなかったけどさプロローグかと思ったけどさ秘密のお話って何だよこれがラブレターだとしたら絶対告白だろあと※の使い方間違ってるしやっぱりプロローグだろこれえええ本当に何この嫌がらせ!」

一気に突っ込んで疲れた。

それにしても、今日はいつもより早い時間に来て正解だった。まだ下駄箱には誰も居ない。
朝から下駄箱でハアハア言いながら手紙にツッコミ入れてる姿なんて誰にも見られたくなかったし、不幸中の幸いとはこの事だ。

しかし、これがもし、もう少しまともな文章の手紙で、さらに悪ふざけではなく正真正銘のラブレターだったとしたなら、これは俺にとって人生初のラブレターということになる。…ちょっと妥協点が多過ぎる気はするが、そう考えたら嬉しいかもしれない。
…少しポジティブになろうとしてみたが、良く考えたらここは全寮制の男子校だった。

正真正銘のラブレターだったとしたらやっぱり一番最悪だ。


「やめよう、考えたくない」
嫌がらせの産物を一応鞄に突っ込んで、そのまま教室の鍵を取りに教員室へ向かう。今日は日直だから早く来たのであって、こんな嫌がらせに時間を取られてる場合じゃないんだよ。


…この日から、俺の平凡な日常が大きく変わる事になるなんて、一体誰が予想出来たというのだろうか?


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