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神様は俺をどうしたいのだろう。

渋々404号室に入った俺は、村上とのろい君と三人で食卓を囲んでいた。

小澤君がまだ部活から帰って来ていないから、本当に食卓を囲んでいるだけで、まだ何も食べてはいないという一番最悪で気まずい状態だ。

しかし、本当の悪夢は小澤君が帰って来てから始まるのかもしれないと、机の上に並ぶ得体の知れない料理の数々を見ながら俺はぼんやりと考えていた。

…一見スペアリブに見えなくもない肉や、一見ミネストローネに見えなくもないスープ、その他もろもろ…美味そうに見えなくもないのだが、調理したのがのろい君というのだから話は別だ。

これは食いたくない。
食いたくないぞ俺は…

「………」
「………」
「………」

そんで誰か喋れよ!
頼むから喋れよ!特に村上!俺とのろい君は初対面なんだからお前は気を遣えよ!
そんな俺の願いも虚しく、村上は何も喋る事なく気楽そうに欠伸をして、更にウトウトしはじめやがった。ちょ、それだけはやめろお前寝るなー!!!

「…河合 総一君」
「はっはいぃぃ!」

急にのろい君にフルネームを呼ばれた俺はビックリしすぎて声が裏返ってしまう。
すると、のろい君は目を見開いて、口元を怪しく歪ませて続けた。

「名は体を表すと言った物だが、君ほどその名前が似合う人は居ない様だ…」

え、えええどういう意味ですか!っていうかその表情怖っ!

「あ、ああああの、どういった意味でしょうか…あは、あはは」


「…河合総一…かわいそういち…かわいそう…可哀相…ふふふ」


……………



うわあああすげえ失礼な理由だったー!何か姓名判断的な小難しい理由でもあんのかと思ったらただの駄洒落感覚の失礼な理由だったー!
俺が可哀相ってか!その通りだわ!そんでそれお前のせいだわ!
っていうかそれを言うならお前の名前が一番体を表しとるわ!
ふふふじゃねえわ気味悪いわ!

「あ、あはは、そうですか、あはは!っていうかあれですね、小澤君遅いですね!どこで何してるんですかね!」

「……………」

ええええ無視かよ!何なんだよちくしょう怖えよ!
小澤君の名前を出した途端、突然俯いて黙りこくってしまったのろい君に俺はどう接し……ん?
…の、のろい君…?

良く見てみると、俯いたのろい君の視線の先にあるものは……


スペアリブ…に、見えなくもない、…肉……!?



おっ、


お、おおっ、お



「小澤くうううううん!!」
「はーい、呼んだ?ごめんね遅くなっちゃった!」

俺が叫んだと同時に、部屋の扉が開いて小澤君がひょっこりと顔を覗かせる。

「ふふふ…」

のろい君は血走った目を見開いて、不気味に笑うのだった。


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