のろいかける
「ああああの、すんません、ちょ、ほんとごめんなさい、いや、もうしわけございません」
本日何度目かの混乱を見せている俺。その後ろで村上がプスプスと笑っている。
村上、ほんとお前覚えとけよ!
俺の腕を掴む手がやっと離れたと思ったら、扉がゆっくりと開いて…恐る恐る目をやると、その先には真っ黒なマント…えっマント!?…うん、マントだ…ええ…マントて…えええ…どこで買ったんそんなマント…
…とりあえず、黒いマントに身を包んだ不気味な男、のろいかける君が立っていた。
身長は俺より少し高い…ということは、平均より少し高いくらいだろうか。
フードで顔は良く見えないけれど、真っ黒な前髪が目が隠れるくらいまで垂れ下がっている。
髪の隙間からうっすら見える目は充血し、更にカッと見開かれていて引くほど怖い。
「…晩餐の準備は既に出来ている。色んな生き物から毟り取り絞り取った肉だの汁だのを死ぬほど用意した。…ふふ、死ぬほどと言うのは可笑しいか…もう死んでいる訳だから…さあ、入りなさい。」
ボソリと呟いたあと、のろい君は部屋の奥に消えて行った。
え、ええええ怖いよ!
言い回しがいちいち怖いしジョークっぽい所が全然笑えねえってかむしろ一番怖いよ!
そんで何の肉で何の汁だよ!
それが解らない限り絶対食いたくないわ!つーか小澤君なんて奴に調理担当させちゃってんの聞いてないよマジで!
残された俺は即刻村上の方を向いて悪態を付く。
「おっお前許すまじ!許すまじレベルでマジで!マジでこえーよ!」
「お前落ち着けよ!うははおもしれ!」
笑ってる場合か!俺は帰る!と言おうとした瞬間、今度は村上に手を捕まれる。
「…帰るのは止めとけ。かけられるぞ。」
何を…?とは言わなかった、言えなかった…というより、考えるより先に脳が理解した。
「の、のろい…」
「みなまで言うな」
静かに404号室に足を踏み入れた俺達だった。
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