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「…ごめん、君と会えた事だけで充分だったはずなのに、いきなり酷い事を言ってしまった…」
「え?あ?…え??」

…状況が読み込めない。
便所でいきなりすごい男前に意味不明な絡まれ方をされたあげくため息をつかれ更に謝罪を求められたからわけもわからず謝罪したのにそれを遮られて逆に謝られるという状況なんて、生まれて初めてなんですけど!

「あ、あの、ほんとすみません、あの」
「言わなくて良い。わかってるんだ、君の言いたい事は」

いや絶対わかってねえだろ!あんた誰だよ!
いや待て、もしかしたらわかってらっしゃるのかもしれない。
自己紹介、もしくはこの状況の説明をしてくれるのかもしれない。
俺は一縷の望みにかけて、とりあえず黙ってみた。



「…僕は美しい…だろう?」



え、えええやっぱりわかってらっしゃらなかったよっていうか何だよ!何なんだよマジで!
…だろう?じゃねえよ!いやまあ美しいとは思いますけど、この状況でそれ言うのおかしいだろ!

「それに引き換え、君は平凡…不安になる気持ちはとっても良く解るよ」

し、しかも失礼だ…いや、っていうか、えええ…??

「だけど大丈夫。僕の輝きの前ではそんな事は何の問題にもならない…問題があるとすれば、僕の輝きに魅入られた子羊達が嫉妬して君に危害を与えるかもしれない事だけど、まあそれも僕の輝きでなんとかするから大丈夫」

ああああああこの人大丈夫じゃない人だ!
もう言ってる事が殆どわからないし、僕の輝きって一度に3回も言えないだろ普通。
俺なんて人生で1回も言った事無いわ!とにかく早いとこ適当に逃げてしまおうと、俺は無理矢理笑顔を作る。

「マジですか!貴方の輝きに安心しました!それじゃ俺はここで!」

言いながら、変人をすり抜けて逃げようとした筈なのに、急に視界が不自由になり、暖かい感触が身体を覆った。
あ、あれ?何が起こっ…

「僕の名前は"貴方"じゃない」

耳のすぐ傍で声がした。
抱きしめられている。
変人に抱きしめられている!

「あ、あの、離して下さい」
「…名前を呼んでくれるまで離さない」

だからあんたの名前がわかんないんだって!
どうすりゃいいんだと涙目になっていると、変人が小さく笑う。

「…緊張してるの?僕の名前は成瀬麗緒だよ」


なるせ れお

成瀬 麗緒…?

『※秘密のお話があります、放課後屋上に来て下さい。3年D組 成瀬 麗緒』

『成瀬先輩はこの学園の有名人だよ。すっごくかっこよくて、"学園男前ランキング"では、各部門で常に一位、若しくは上位をキープしてる人気者なんだよ!』


これはもしかしたら、大変な事が起こっているんじゃないだろうか。


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