国御田先生!


教員室に着いて担任に日誌を渡し、そのまま国語のじいさんの元へと急ぐ。
じいさんは俺を見付けると、にっこりと笑って言った。

「遅かったねえ、バックレたかと思ったよ」

こ、怖えよ!何が怖いってじいさんがバックレるとかそういう単語を平気で使うのが怖えよ!

「どうもすみません、日直だったんで遅くなりました」
「そうかいそうかい、お疲れさん。とりあえず座んなさい。河合君だったね、これでも食べなさい」

じいさんはにこにこと笑ったまま、俺を適当な椅子に座らせて飴玉をくれた。
あれ?俺怒られるんじゃないの?でもとりあえずラッキーと思って飴玉を受け取り、包みを開けて口の中にほうり込む。
甘い…懐かしい味が口の中に広がって、田舎のじいちゃんとばあちゃんの顔が頭に浮かんだ。

「…ありがとうございます」
「馬鹿め、毒入り飴をまんまと食いおって!」
「ブバッ!!」

うっかり飴玉を吐き出してしまって、それを受け止めた右手がネトネトで気持ち悪い。


「キッタネ…エンガチョじゃ。どっか行け。」


こ、このクソジジィ!性格悪すぎるだろ!ほんとクソジジィ過ぎるだろ!前代未聞のクソジジィだコイツ!

わなわなと震えていると、クソジジィは俺を追い払うように、シッシッと手を振る。

「…私は年寄りがぐだぐだと説教垂れんのは嫌いでな。これに懲りたら居眠りなんかすんじゃない。さっさと寮に戻ってゆっくり休んで、明日も頑張んなさいよ」


…嫌がらせかと思いきや優しさだったー!!しかもポリシーのある感じがかっけえー!!クソジジィとか思ってごめんなさいー!


「せ、先生…!」

じいさんはそのまま目を閉じて、寝てるのかと思うくらい何も言わなくなった。
物言わぬその姿…かっけえよじいさん…ほんとかっけえよ…
俺はじいさんに男の生き様ってやつを教えられた気がした。
…俺もじいさんを見習って、何も言わないまま立ち上がり静かに一礼すると、そのまま教員室を出た。





「国御田先生、会議始まりますよ」
「…ぉお、よう寝た…会議か……うん、バックレるわ…面倒だもの…教頭は私の事嫌ってて風当たり強いし…白石先生、あとよろしく」

「ちょお待てジジィコラ、今日の会議は教頭の机の引き出しにベットベトの飴玉がビッシリ入ってた事件についてだぞ。絶対犯人てめぇだろーが!」


国御田先生はただの陰湿なクソジジィでしたというお話。


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