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村上と小澤君が自分の席に戻ると、暫くして教師がやって来た。

午後の授業はとにかく睡魔との戦いだ。

眠らないように努力はしたが、国語教師のじいさんの、気の抜けた話し声がとても心地好くて、俺はうっかり机に突っ伏して眠ってしまった。



どれくらい時間が経っただろうか。


……君。
…河合君。



夢の中で誰かが俺を呼んでいる。なんだよもううるさいな…
無視を決め込もうとしていたのだが、声の主はしつこく俺を呼ぶ。


…河合君ってば。
…ねえねえ。
…聞こえる?
…寝てるの?



し、しつけえ…本当にしつけえよ寝てるよ!見てわかんないのか河合君は寝てるよ!


…寝てるんだね。
…起きて欲しいな。
…起きた方が良いよ。
…でなきゃえらい事になるよ。
…おーい
…おーーーーーい



「うるっせえええ誰だよ!」



バッと飛び起きて叫ぶと、目の前に国語教師のじいさんの顔があった。周りを見渡すとクラスメイトが皆可哀相な物を見る目で俺を見ていて、今は授業中でさらに国語のじいさんは居眠りを許さない厳しい教師だったことを思い出す。

「おはようございます。戦争で父を亡くしました、国語教師の国御田一郎です。君、放課後教員室に来なさいね」


あああ最悪だ。
さりげなく悲しい過去まで聞かされちゃって最悪だ…
俺が絶望に浸っていると、じいさんはにっこりと笑ってそのまま教壇に戻って行った。

ふと小澤君の方を見ると、心配そうな顔で俺を見ていたので、とりあえず大丈夫だとピースサインを送り、そのままなんとなく村上の方に目をやる。

あいつの事だから俺の不幸を笑っているんだろうなと思っていたのに、微動だにせず黒板の方を見ていた。
俺の事はどうでもいいんかい!
ちょっと寂しくなって良く見てみると、なんと村上は目を開けたまま寝ていた。

気持ち悪いよ…寝坊で遅刻した上に午前中ずっと居眠りしてほんで今もそんな努力までして寝るとかマジで気持ち悪いよ…


うんざりしながらも、気を引き締めて俺は午後の授業に挑んだのだった。


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