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「…とにかくすげえ有名な人なんだよ、成瀬先輩はさ」

そう言いながら、村上は怪訝な表情を浮かべて手紙を見ている。
小澤君まで何故か真剣な表情をしていて、俺はまだランキングについて色々とツッコミを入れたくて仕方なかったのだが、とりあえず空気を読んだ。

「…でもさ、何でそんな凄い先輩が俺みたいな普通の奴にこんな嫌がらせ手紙書くんだよ」

…自分で言ってて悲しくなるが、俺は見た目も至って普通、中身も普通の平凡高校生だ。
ちょっとしたお洒落意識で制服のシャツのボタンを開けてみたりはしてるけど髪を染めたりはしてないし、授業はあんまり真面目に聞いてないけど日直だとか当番だとかの仕事をサボる程不真面目ではなく、特別好かれるタイプでも無ければ、嫌われ者になるようなタイプでもない。
ちょっと人見知りしたり人付き合いが苦手な所はあるけど、基本的にはフレンドリーだし、もう本当に普通だな俺もうちょっと何か無いんかい…あっ!!

「俺バク転出来る!!」
「えっお前急にどうしちゃったの」
…ほんとどうした俺!

「すごい!ジャ○ーズみたいだね河合君!」
「お、小澤君!こういう恥ずかしい所は流してくれていいから!忘れて下さいバク転のくだりは!」


「…とにかく、おかしいな。成瀬先輩がこんな妙な手紙を書くとは思えねぇし、先輩の親衛隊がお前みたいな平凡でちょっと恥ずかしい奴に目を付けるとも思えない」

さりげなくすごく失礼な事を言われたが、今俺は本当に少し恥ずかしいので言い訳が出来ない。
っていうか親衛隊まであるのか…ファンクラブとはまた別なのだろうか。
良くわからないけど本当すごいなこの学校は。

「…ってことは、どっかの誰かが悪戯で勝手に成瀬先輩の名前使って、俺をからかったって事?」
「ま、そういう事になるな」
「ひどいよそんなの…河合君の事馬鹿にしてるよ…」

小澤君が悔しそうに唇を噛み締めて、ふるふると震えている。
まるで自分の事のように怒ってくれる姿に俺はちょっぴり涙が出そうになった。

「小澤君、ありが…「河合君はバク転だって出来るのに!!!!馬鹿にすんなよ!この…うんこ手紙クソ野郎!」」

えええ〜バク転は関係ねぇよ!忘れろって言ったじゃんわざとか!っていうか口悪っ!
口悪いけど悪口のセンス小3!

「う、うんこ手紙クソ野郎って何かすげえな…うんことクソに挟まれた手紙…か。単純ながらもすげえ嫌だぜ…」

村上が生唾を飲み込みながら言った。なんだよ、なんなんだよこいつらは…!
…もう色々とどうでもよくなって来た俺は、とっくに食べ終わっていた弁当を片付けて次の授業の準備に取り掛かる。

「とりあえず、あの手紙はただのタチの悪い悪戯ってことで終了。もうチャイム鳴るから二人とも席に戻ろうな」

言った途端、丁度昼休み終了のチャイムが鳴った。


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