女装少年。 罰ゲーム(前半戦) (7/14) あとはなんだっけ……、ああそうだ。 オタク用語では、男の娘って言うんだっけ。 まさか自分がこうなるとは思わなかったけど。 その、なんというのか……。 とにかく落ち着かない。 一番がその……、なんだ。 下着の中のモノの収まりで、女の子用の小さなそれでは隠しようがなくて、仕方がないから、内股で隠すように挟み込む。 少ないながら布地が押さえてくれているからか、それに関しての居心地の悪さはない。 ただ、なんとも心許(もと)なくて、ついつい内股に力を入れてしまう。 「なんだよ。ハル……じゃなくて、今は遥ちゃんか。ノリノリじゃん」 「なっ、ハルカって……」「こらばか。大声出すな」 「んぐぐっ」 遥って名前で呼ぶなと文句を言おうとした声を、亮に右手で押さえて奪われた。 肩越しに腕が回ってきたその体勢は、傍目には、後ろから抱きしめられているように見えているだろう。 そっか。 女装してたんだっけ。 奇しくも股間を気にするあまりに内股になったことも、悔しいけどこの際、よしとしなければ。 「あれ、反論しねえの?」 亮に聞かれたけど、答えは『イエス』だ。 この格好でこの声はないだろう。 そんなにハスキーってほどじゃないけど、俺の声は普通に男の声だ。 それより、今は男が女装してるのがばれる方がまずい。 調子に乗って腰に回してくる亮の手の甲をつねり上げて、にっこりと精一杯可愛く笑ってやった。 「も、萌え」 は? お前、なに言ってんの。 亮って実は、オタクなの? なんちゅーか、むちゃくちゃ喜んでるっぽいんですけど……。 「電車に乗る前に、駅前のマックで朝マックして行こうぜ」 不気味なほどにご機嫌な亮の提案で、俺たちは駅前のマックに向かった。 prev|next 7/38ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |