女装少年。 罰ゲーム(前半戦) (5/14) ――数時間後。 ――ええと。 まずは何から突っ込んだらいいんだろう。 「なにこれ?」 とにかく一番、疑問に思っていること口にすれば、亮のクラスメート、姫ちゃんは嬉しそうに笑った。 「さすがは姫だな」 「んふふ。土台がいいからね」 今回はこないだのコンテストの時よりやり甲斐があったわと、よくわからないことを言いながらご満悦な彼女。 「よし。時間的にもちょうどいいな」 「何が」 「電車だよ」 「ってか待てよ。このかっこで外に出るのかよ!」 そう文句を言うと、姫ちゃんが例の顔で笑いながら、何やら可愛い靴とバッグを俺に差し出した。 さてここで、空白の時間のあらましを説明しよう。 自分の部屋まで二人に引っ張って来られた俺はまず、勉強机の前に座らされた。 「…なにこれ?」 そしたら目の前に出るわ、出るわ。 鏡に口紅に、付け睫毛に付け爪まで。 目の前に、ずらりとメイク道具が並んだ時には嫌な予感がした。 そしてその場合、だいたいの嫌な予感は悲しいかな、当たってしまうんだけど。 「はい。目を閉じてー」 「なっ!」 そんな姫ちゃんの嬉しそうな一声を合図に、俺の改造計画は遂行されてしまう。 「ちなみに、姫の命令も俺の命令ね」 「―――っっ」 わかってるっつの! 観念した俺は顔中をいじくり回され、気付いた時には、鏡の中に見知らぬ女の子がいたってわけだ。 それから当然、メイクだけで終わりのはずはなく、付け爪から付け睫毛、おかっぱボブのかつら、ワンピースまで用意されていた。 「キャミワンピの中はコレねー」 「なっ?!」 こ、これってまさか、ブ、ブ、ブラ、ブラ……、っ、ってか初めて本物を見たよ! なんて興奮してる場合じゃないし! 臑毛や腋毛なんかのむだ毛の処理から、下着までもが完璧に。 つまりは、俺は二人の悪魔の手によって、完璧な女の子にされてしまった。 prev|next 5/38ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |