女装少年。
罰ゲーム(前半戦)

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確かに亮の言うとおりで、俺はゲームに負けるたびにそう言っていた。
半ば亮は呆れているけど、このまま勝ち逃げさせるわけにはいかない。

「アキ、もう一回だ!」
「えー、やだ。ハル弱いもん」

亮はコントローラーをほっぽり出して、ベッドに寝っ転がって背中を向けた。
その肩をゆさゆさ揺さぶりながら、

「なんだよ。勝ち逃げする気かよ」

なんてわざと亮を煽ってみる。
そしたら、

「じゃあさ。罰ゲームを賭けて勝負な」
「罰ゲーム?」

亮はくるりとこちらに向き直って、急にそんなことを言い出した。

「もし俺が500勝するまでにハルが200勝したらハルの勝ちね」
「ぬぬっ」
「で、ハルが200勝するまでに俺が500勝すれば俺の勝ち」

当時の勝敗は確か112勝400敗ぐらいだったか、どう考えても確率的には、俺の勝ち目はない。
それでも、

「うおっしゃーっ、望むところだ!」

そう軽い気持ちで賭けに乗ってしまった俺は、すっかり忘れてしまっていた。
亮の記憶力が恐ろしいほどよくて、おまけにしつこい性格だと言うことを。

弱っちいくせにムキになってしまうのは俺の悪い癖で、あの時、よくよく考えなかったことを今になって後悔したけど、どうやら遅すぎたようだ。

「そうだなあ。何をやってもらおうかなあ」

あの時、亮が提案した罰は『勝った方の命令を一日聞く』という恐ろしいもの。
つまりは賭けに負けてしまった俺は、丸一日、亮の命令を聞く羽目になってしまった。


亮は子供の頃から悪戯好きで、それを思うとお先、真っ暗だ。
いつだったか、ふざけてやった王様ゲームで王様になった亮に、散々、振り回されたことを思い出す。

「そうだなあ。決行日はいつにしようか」
「決行日って……。おまえ、俺に何をやらせる気だよ」

なんか、むちゃくちゃ嫌な予感がするんですけど……。

この顔は、亮が良からぬことを考えてる時の顔だ。


「まあまあ。楽しみにしててよ。そうだな。来週の日曜日にでも」

ちょうど連休だし。
なんて恐ろしいことを言いながら、亮はもう一度、あの不吉な笑顔を見せた。


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