女装少年。 罰ゲーム(前半戦) (2/14) 確かに亮の言うとおりで、俺はゲームに負けるたびにそう言っていた。 半ば亮は呆れているけど、このまま勝ち逃げさせるわけにはいかない。 「アキ、もう一回だ!」 「えー、やだ。ハル弱いもん」 亮はコントローラーをほっぽり出して、ベッドに寝っ転がって背中を向けた。 その肩をゆさゆさ揺さぶりながら、 「なんだよ。勝ち逃げする気かよ」 なんてわざと亮を煽ってみる。 そしたら、 「じゃあさ。罰ゲームを賭けて勝負な」 「罰ゲーム?」 亮はくるりとこちらに向き直って、急にそんなことを言い出した。 「もし俺が500勝するまでにハルが200勝したらハルの勝ちね」 「ぬぬっ」 「で、ハルが200勝するまでに俺が500勝すれば俺の勝ち」 当時の勝敗は確か112勝400敗ぐらいだったか、どう考えても確率的には、俺の勝ち目はない。 それでも、 「うおっしゃーっ、望むところだ!」 そう軽い気持ちで賭けに乗ってしまった俺は、すっかり忘れてしまっていた。 亮の記憶力が恐ろしいほどよくて、おまけにしつこい性格だと言うことを。 弱っちいくせにムキになってしまうのは俺の悪い癖で、あの時、よくよく考えなかったことを今になって後悔したけど、どうやら遅すぎたようだ。 「そうだなあ。何をやってもらおうかなあ」 あの時、亮が提案した罰は『勝った方の命令を一日聞く』という恐ろしいもの。 つまりは賭けに負けてしまった俺は、丸一日、亮の命令を聞く羽目になってしまった。 亮は子供の頃から悪戯好きで、それを思うとお先、真っ暗だ。 いつだったか、ふざけてやった王様ゲームで王様になった亮に、散々、振り回されたことを思い出す。 「そうだなあ。決行日はいつにしようか」 「決行日って……。おまえ、俺に何をやらせる気だよ」 なんか、むちゃくちゃ嫌な予感がするんですけど……。 この顔は、亮が良からぬことを考えてる時の顔だ。 「まあまあ。楽しみにしててよ。そうだな。来週の日曜日にでも」 ちょうど連休だし。 なんて恐ろしいことを言いながら、亮はもう一度、あの不吉な笑顔を見せた。 prev|next 2/38ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |