女装少年。
罰ゲーム(後半戦)

(10/16)

さっきの返事のかわりに俯いたまま、亮のシャツの裾をそっと掴んだ。
本当はあのまま続けたかったけど、誰かに見られるのだけはごめんだ。

俺の気持ちが通じたのかどうだか、亮に再び手を握られた。
しっとりと汗ばんでいるのは少しだけ走ったのと、さっきの出来事も関係しているんだろう。


だんだんと薄闇に包まれていく夕暮れ時。
まるで最初から約束していたかのように、二人の足は自然と観覧車へと向かう。

この遊園地一番のアトラクションだから行列も覚悟していたけど、案外、すんなりと順番が回ってきた。
スタッフに誘導されるままに青いそれに乗り込んで、亮と向かい合わせに座る。

「なんか懐かしいな」

俺は太陽に背を向けているから、後ろを振り向きながらそう言った。

「ああ」

そんな亮の声を後ろに聞きながら、建物の向こうに沈んでいく大きな太陽を眺める。



いつだったか、空一面を薄い雲に覆われた曇りの日に、こうやって亮と観覧車に乗ったっけ。
オレンジ色の雲が薄闇に包まれて行くにつれて何とも言えない紫色に変わっていくのを亮と二人、飽きることなく見つめていた。

当たり前のように俺のそばには亮がいて、子供の頃の楽しかった記憶の全てに亮がいた。
そんな亮とこんな関係になるなんて、あの頃の俺は想像もしなかった。

きっと亮も同じだろう。
いや、違うか。

亮はその頃から、俺のことを好きでいてくれたんだっけ。


俺たちの乗った観覧車がちょうど一番上まで来た時、

「遥」

亮に呼ばれた。
ぽんぽんと亮の隣の座席を軽く叩いて誘うから、ちょっと恥ずかしいけど亮の隣に座る。

「わっ」
「おっと」

亮の隣に座った瞬間、観覧車が重量移動のせいで少しだけ揺れて、慌てて亮の肩に掴まった。
そのまま顔を上げたら目の前に亮の真剣な顔があって、どちらからともなく唇を寄せる。


再び騒ぎ始めた胸の鼓動。
やっぱり亮のも同じだった。

「――やっ」

俺の唇から離れた亮の唇が俺の首筋を這い、カーディガンを脱がせた肩口から腕を伝っていく。
右手で太股を撫でられてスカートの中をまさぐられ、反対の手は俺の胸に。

そこを撫でられて乳首を軽く指先で弾かれるたび、甘い吐息が鼻から漏れた。
お化け屋敷の中で中途半端に弄られた場所が再び疼いたけど、もうこれ以上やるのはやばい。


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