女装少年。
罰ゲーム(後半戦)

(7/16)

このアトラクションの所要時間は10分と少しらしく、時間を潰すにはちょうどいい感じだ。
ここから脱出してしまえば観覧車に乗れるんだと自分に言い聞かせ、亮の後を追う。

「アキ。絶対に置いてくなよ」

子供の頃はいつも途中で亮に置いて行かれて、大泣きしていた。
亮はもう一度『もちろん』と意味ありげににっこり笑うと、俺の手を握る自分の手に力を込める。

「おまえ、相変わらずだな」
「い、言っとくけどお化けが怖いんじゃないからな!」

そう言いつつ軽く睨んでやったのに、亮は余裕の顔で『はいはい』なんて笑っている。



そう。このアトラクションは泣く子も黙るお化け屋敷で、俺がこの世で一番苦手なものだ。
一応、言っとくけどお化け自体は全く怖くはなくて、暗くて狭い場所が苦手なだけだ。

特に昼間の明るい時間帯に急に暗闇になるのが駄目で、だから、エレベーターなんかで停電されたらパニックに陥る。
お化けはその暗闇に付属されるものって考えがあるから、ついでにちょっとだけ苦手なだけだ。

もしも明るい場所で会ったのなら全く怖くはないし……って、暗闇に現れるからこそお化けは怖いんだろうけど。

とにかく、ぶっちゃけてしまえば雷も苦手なんだけど、この雷も昼間なのに薄暗くなってピカドンやられたら堪らない。
言ってみれば周辺の急激な変化が駄目みたいで、まあ、他にも大きな音や声で驚かされるのなんかも苦手なんだけどさ。


この遊園地のお化け屋敷は古典的なもので、柳の木の下に古井戸があったり天井から生首が落ちて来たりするんだけど……、

「――っっ」

何度も亮に無理矢理連れ込まれて仕掛けも全てわかってるのに、それでも駄目なものは駄目だった。
次にどうくるかわかり切っているのに、あまりの衝撃に声も出ない。

亮の腕にしっかり掴まり、シャツの裾をぎゅっと掴んだ。
順路を進むにつれて繋いだ手は離してしまったけど、さっきより密着度が上がったからか、お互いの胸のドキドキまでもがお互いの体越しに伝わる。

(あ……、やばっ)

そしたら、電車の中での甘い疼きを思い出して、下半身に軽い鈍痛が走った。
そこに再び血流が集まるのを感じて、亮に気付かれないようにそっと腰を引く。

そんな俺を王様な亮が見逃すはずがなく、

「…ハル。もしかしてまた勃った?」

亮は俺の耳元で俺にだけ聞こえる声でそう言うと、再び真正面からぎゅっと抱きしめてきた。


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