女装少年。
罰ゲーム(後半戦)

(6/16)

子供の頃の俺たちが最後に乗ったのは観覧車。
建物の向こうに太陽が沈むのが見えて子供ながらに、その絶景に感激したっけ。

できるなら同じ時間帯にもう一度見てみたいから、所要時間にもよるけど、やっぱりもう一つぐらい別のアトラクションを回った方がいいのかも知れない。

「次はどれ行く?」
「そうだなあ……」

ほとんどのアトラクションを遊び尽くしたと言うのに、亮は観覧車に乗ろうとは言い出さなかった。
それは、亮も観覧車での子供の頃の思い出を覚えていてくれてることに外ならなくて、そう考えると顔がにやけて来る。

亮も口にはしなかったけれど、あの時に見た夕日を忘れてはいないはずだ。
二人で大きな太陽が沈んでいる方向の座席に膝を着き、窓にべったり張り付いて夕日を眺めたっけ。

懐かしさにしみじみしていると不意に、

「……ぶっ」

ぴたっと立ち止まった亮の背中に、俺は顔面から思い切り突っ込んだ。
しこたま打ったおでこをさすりながら顔を上げたら、

「遥。次、あれな」

真っすぐに正面を見た亮が、ちょっと命令口調でそんなことを言ってくる。

「え」

それが何のアトラクションなのかを確認した瞬間、今度は俺の足が完全に止まってしまった。





「…もしかしてあれ?」
「そう」
「…マジ?」
「もちろん」

どんなに完璧に見える人間にも、必ず天敵や苦手なものがある。
それが亮にとってはスピードであり、平々凡々な一般人代表のような俺にも当然それは、あるんだけど。

「えーっと。俺はここで待ってるからアキ一人で……」

行って来いよと続く俺の台詞は、

「王様の命令は?」

あの非情な台詞に一刀両断されてしまう。

「無理っ。絶対無理!」
「大丈夫。俺がいるだろ」

他にも俺が守るからだとかそんな男前なことを言われても、無理なもんは無理だっつの。
あんな何が起こるのかわからないようなとこに、好き好んで行くやつの気が知れない。

「いいから。ほら行くぞ」

それでもやっぱり王様の命令は絶対らしく、そう男前に笑った亮に手を引かれて、俺は恐る恐る、そのアトラクションに足を踏み入れた。


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