女装少年。
罰ゲーム(後半戦)

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この店は俺たちが子供の頃からある店で、うろ覚えだけどおそらくは内装も何も変わっていない。
食券を買うシステムも当時と同じで、俺はその頃と同じ、ホットケーキ…今はパンケーキか。
それととクリームソーダをAランチのデザートに選んだ。
さすがにあの頃のようにパンケーキとクリームソーダで満腹になるのは難しい。
どうやら亮も同じみたいで、あの頃、いつも食べていたメニューと一緒にBランチを選ぶ。

「お待たせ」

カウンターでパートのおばちゃんに食券を渡すと、すぐにそれぞれのランチメニューが出て来た。
あの頃の俺たちが食べていたお子様メニューは食後に頼むことにして、ランチのプレートを手に空いてる席に着く。

その席も子供の頃の俺たちの指定席で、いつもこの席で食事をしていた。
目の前にメリーゴーランドが見えて、ホットケーキを食べながらも早く遊びたくてうずうずしてたっけ。

何もかもが懐かしすぎて、反対に言葉が出て来なかった。
決して気まずいだとかそんなんじゃなくて、ただただ無言でフォークを口に運ぶ俺たち。

「遥、ついてる」
「あ」

食事の後のデザート、パンケーキの食べかすが口の端についてたようで、亮は笑ってそのかけらを口にした。
ぱくっと音がしそうなその仕種はあまりにも自然だったからか、恥ずかしいことをしている自覚は全くなかった。

ただ、端から見たらとんでもないバカップルに見えていたはずだ。

子供の頃の記憶を辿りながら食事をして、満腹感と不思議な幸福感に満たされた俺たちは、店を出た。



「ね、アキ。何から乗る?」

店から出るとまた自然と手を繋いで、二人で遊具を見て回った。
それはまるっきり普通のカップルと同じで、いつの間にか自分が思っている以上に亮とのデートを楽しんでいる。

考えてみればこの格好じゃなくてもこうやって遊ぶことはできるけど、この手の温もりは、この格好じゃなきゃ感じられなかったものだ。

罰ゲームに負けたことも、まんざら嫌なことばかりじゃなかったなと今更ながらに思う。


「そうだなあ。子供の頃の俺らが好きだった乗り物、全部制覇して回ろうぜ」

懐かしさからか亮は俺を女の子扱いせずにそう言って、悪戯っ子のように笑ってみせた。


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