女装少年。
罰ゲーム(後半戦)

(3/16)

「なあ、遥。最初にどれに乗る?」
「そうだなあ……」

子供の頃と変わらない遊具を見回りながら、その日の行動を思い出してみる。

(……ぐう)
「あ」

そしたら答えより先に腹が鳴り、思わず苦笑う。
そう言えばまだ少し早いけど、そろそろお昼時で、もう腹が減ったみたいだ。

やっぱ、育ち盛りだし、どうやら朝マックだけじゃ足りなかったらしい。

「先に何か食わねえ?」

小声でそう言ったら、亮はなんとも微妙な表情(かお)をして、

「んー、遥。言葉遣いさ。なんとかならねえ?」

そんなことを言ってくる。

「は?」

わけがわからなくて思わずそう漏らすと、またまた王様から命令がくだされた。


どうやらこの見た目にいつもの言葉遣いに違和感があるようで、

「なんつーかさ。その格好と言葉遣いは違和感があるんだよ」

だから、今日一日は女言葉を使うこと。
亮はにっこり笑うと、そんなおぞましいことを命令してくる。

「アキ。おまえいい加減に……」「王様の命令は?」

間髪入れずにそう言われ、ぐうの音も出なくなる。
それを言われたら弱い。

俺ってば、こう見えて男気溢れる性格だから、初志貫徹とばかりやると言ったらやらなきゃ気が済まない。

「はあ……、わかったよ」

諦めたように溜め息をつくと、

「女言葉までは無理だけど、これくらいで許してよね」

亮を軽く睨んで、

「何かに乗る前に何か食べようよ」

上目使いで精一杯甘えたように、そう言ってやった。



なんで俺がこんなことを……。
そう思っていたのは最初だけで、結構、その遊びが気に入ってしまった。
女の子になりたいだとか、今回のことで女装が趣味になってしまっただとかじゃなくて、可愛い行動を起こした時の亮の反応がとにかく面白い。

男同士のざっくばらんな感じもいいけど、亮の別の一面を見たようで、それを今までは他の女の子に向けていたと思うとあれだけど、正直、大切にしてくれてるようで嬉しくもある。

「うわー、懐かしい!」

思わず叫んでしまって、慌てて口をつぐむ。
亮に連れて来られたのは遊園地内にある食堂のようなレストランで、ここに来ればいつも食事をしていた場所だ。

「確か遥はいつも、ホットケーキとクリームソーダを注文してたよな」

亮も懐かしそうにそう言うと、二人で食券の販売機に向かった。


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