女装少年。
罰ゲーム(後半戦)

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そういえばさっきはニュアンス的にお互いの気持ちを確かめ合う形になったけど、お互いの気持ちをきちんと伝えたわけじゃない。
俺も亮も『好き』の一言を口にしなかったし、ただ恋人同士のようなキスをして、ふざけてないことを確認し合っただけだ。

誰とも付き合ったことがないからよくわからないけど、好きだと告った上で、付き合ってくれ…で、相手に承諾されてから恋人同士になるんだよな。

そう考えてみれば、俺たちの関係は恋人同士でもなんでもない。
幼なじみの延長、つまりは友達以上恋人未満って感じ?

そんなことを考えていたからか、

「遥ちゃん。つまらない?」

亮のやつがそう聞いてきた。
ちょっとむかつくし、いらついた。

「…別に。つか、二人切りなんだから遥ちゃん呼ばわりはやめろ」

八つ当たりのような感じでそう言ったのに、亮は至極ご機嫌だ。

「じゃあ、遥」

その本名を呼ばれるのは、今までは嫌いだったはずなのに、なのに、あだ名じゃなくて本名で呼ばれて胸がときめいた。

「あれ。いいの?」
「…なにが」
「名前で呼んで」
「格好が格好だからな。今はそう呼ばれた方が違和感ないだろ。だから……」

特別に許すとそっぽを向いて言ったのに、亮はなんとも言えない顔をした。


考えてみれば『遥』と本当の名前で俺を呼ぶのは両親と親戚縁者くらいで、普通の友達はみんな俺のことを『ハル』とあだ名で呼んでいる。

亮も俺が本当の名前を嫌がってるのを知ってるから『ハル』って呼んでいたけど、本当の名前を呼ばれてなぜだかホッとした。

今までだと亮でも、そう呼ばれるのは嫌だったのに、こんなとこにまで女装マジックが効いているのかどうだか、本当の名前は亮だけの特別の呼び名みたいで、呼ばれるたびに胸がくすぐったい。


いつの間に俺、こんなにも乙女になってたんだろ。
……違うな。いつの間に、こんなにも亮のことが好きになってたんだろ。

そんなことを考えていたら、俺の手を握る亮の手に力がこもった。
ふと我にかえって亮を見たら、まだ首の後ろが赤い。


そんな様子がなんだか可愛く見えて、俺はその手を強く握り返した。


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