女装少年。
罰ゲーム(前半戦)

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「行こ」

今度は亮がそう言って、俺たちは再び手を繋いで歩きだした。
情けないことに中途半端に火をつけられた体が疼いて、体の一部分がやばいことになっている。

亮にも周りにも気づかれないように、姫ちゃんから渡されたバッグでそこを隠した。
後ろから見上げた亮は恥ずかしいのか、耳の後ろから首まで真っ赤になっていて、ちょっと可愛く思っていたら、

「…ハルに女装させたのも、こうして本当のカップルみたいに歩きたかったから」

亮が思い掛けないことを言いだした。



「手を繋いでデートして、キスしてさ。その先のことをしたいって思い始めたのは最近だけど」

途中、そんな恐ろしいことまで口にしながら、

「で、女装してもらったら。ハル、むちゃくちゃ可愛いし。こんな可愛い子が一日、俺のもんだって思ったら嬉しくて…」

ちょ、それはどうかと思うぞ。
可愛い子なら他にもいくらでもいるし。

「だから、ちょっと暴走しちまって……。今まで散々、我慢してきたからな」

俺の手を握る手に、ぎゅっと力を込めて、

「けど嫌だったらやめる」

そんなことを言ってくる。

「ばか。嫌だなんて言ってないだろうが。…ふざけんなって言っただけだし」

そう言ってやると、亮がこちらを振り向いた。



「ふざけてないなら別にいい」
「ハル。それって……」

ああくそっ。
もしかして俺ってば、本気でこんなやつのことが好きなんかな。

「デートって言うか、アキが家に来るのも楽しみにしてたし、手を繋ぐのもキスするのも嫌じゃなかったしさ」

うー。どうでもいいけど、むちゃくちゃ恥ずかしい。

「だからってこのカッコはどうかと思うけど。けど、確かに、いつもの格好なら、こんな風におまえと歩けないもんな」

亮の友達はともかく、俺の友達にも何人も擦れ違ったのに誰も俺には気づかなかった。
不本意だけど、どうやら本当の女だと思っているらしく、だとしたら、この格好だと亮と普通にデートができるってことだ。

「仕方ないから我慢する」
「ハル……」
「王様の命令は絶対だろ?」

そう言って握った手に指を絡めた。
恥ずかしいけど、いわゆる恋人繋ぎってやつで亮の隣に立ってみる。


まだまだ一日は始まったばかりで、罰ゲームの有効期限は残すところ20時間と少し。

自分が言った台詞を後悔することになるのは、もう少しだけあとのこと。





ピーッ、前半戦終了ー。

ありがとうございました。
あとがき。

2010/10/20/完結


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