女装少年。 罰ゲーム(前半戦) (14/14) 「行こ」 今度は亮がそう言って、俺たちは再び手を繋いで歩きだした。 情けないことに中途半端に火をつけられた体が疼いて、体の一部分がやばいことになっている。 亮にも周りにも気づかれないように、姫ちゃんから渡されたバッグでそこを隠した。 後ろから見上げた亮は恥ずかしいのか、耳の後ろから首まで真っ赤になっていて、ちょっと可愛く思っていたら、 「…ハルに女装させたのも、こうして本当のカップルみたいに歩きたかったから」 亮が思い掛けないことを言いだした。 「手を繋いでデートして、キスしてさ。その先のことをしたいって思い始めたのは最近だけど」 途中、そんな恐ろしいことまで口にしながら、 「で、女装してもらったら。ハル、むちゃくちゃ可愛いし。こんな可愛い子が一日、俺のもんだって思ったら嬉しくて…」 ちょ、それはどうかと思うぞ。 可愛い子なら他にもいくらでもいるし。 「だから、ちょっと暴走しちまって……。今まで散々、我慢してきたからな」 俺の手を握る手に、ぎゅっと力を込めて、 「けど嫌だったらやめる」 そんなことを言ってくる。 「ばか。嫌だなんて言ってないだろうが。…ふざけんなって言っただけだし」 そう言ってやると、亮がこちらを振り向いた。 「ふざけてないなら別にいい」 「ハル。それって……」 ああくそっ。 もしかして俺ってば、本気でこんなやつのことが好きなんかな。 「デートって言うか、アキが家に来るのも楽しみにしてたし、手を繋ぐのもキスするのも嫌じゃなかったしさ」 うー。どうでもいいけど、むちゃくちゃ恥ずかしい。 「だからってこのカッコはどうかと思うけど。けど、確かに、いつもの格好なら、こんな風におまえと歩けないもんな」 亮の友達はともかく、俺の友達にも何人も擦れ違ったのに誰も俺には気づかなかった。 不本意だけど、どうやら本当の女だと思っているらしく、だとしたら、この格好だと亮と普通にデートができるってことだ。 「仕方ないから我慢する」 「ハル……」 「王様の命令は絶対だろ?」 そう言って握った手に指を絡めた。 恥ずかしいけど、いわゆる恋人繋ぎってやつで亮の隣に立ってみる。 まだまだ一日は始まったばかりで、罰ゲームの有効期限は残すところ20時間と少し。 自分が言った台詞を後悔することになるのは、もう少しだけあとのこと。 ピーッ、前半戦終了ー。 ありがとうございました。 あとがき。 2010/10/20/完結 prev|next 14/38ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |