女装少年。 罰ゲーム(前半戦) (13/14) 突然、訪れる沈黙。 亮はぽかんとしたなんとも言えない顔をして、俺の顔を見つめている。 「…初めて?」 「悪いかよ」 「どれが?」 「―――っっ」 つか、そんなこと俺に聞く?! 男のプライドが粉々だし! 「…全部だよ」 「え?」 「全部だっつってんの!」 ああ、情けない。 「デートも。キスも。それから……、そのあとのことも」 なんで俺、こいつにこんなことを打ち明けてんだろ。 あまりに情けなすぎて泣けてきた。 電車を降りた駅の構内。 俺たちのやり取りを見て、ドラマの撮影かなんかだと思ったんだろう。 なかにはカメラを捜すようにキョロキョロする人もいた。 「行こ」 さすがに恥ずかしいし、ばれたらまずいしで、俺は涙を拭って亮の手を引いた。 なんとも微妙な空気が流れる。 俺、何がしたくて、何が言いたかったんだろ。 なんとなく愛の告白のようであり、そうでもないような。 っていうか俺、もしかして、亮のことが好きだったんだろうか。 つか、亮のことは普通に好きだけど、この気持ちは、なんだかそれとは違う気がする。 「…ふざけてなんかない」 「は?」 亮が何か言ったけど、声が小さすぎて俺には聞こえなかった。 いつになく真剣な亮の顔。 「ふざけてなんかないっつってんだ!」 今度は亮が大声を出す番で、 「ふざけてあんなことなんかできるかよ!」 亮が本気で怒った顔を久しぶりに見た。 道端で喧嘩を始めたバカップルを、オーディエンスは遠巻きに眺めている。 「罰ゲームもずっと楽しみにしてたし。何を命令するかとかも、罰ゲームを言い出した小学生の頃から決めてたし」 「え」 「ハルとデートして、お子ちゃまのじゃないちゃんとした大人のキスをして」 亮……、覚えてたのか。 「それから先のことも、ハルとだからしたかった」 「うそ……」 「嘘じゃない。俺も初めてだし…あんなこと」 「え」 『だってさ、おまえ。むちゃくちゃ慣れてたぞ?』 言いたい気持ちを飲み込んだ。 prev|next 13/38ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |