犬小屋の鍵、貸します。 何度も貴方に恋をする (5/8) 結局、その日は一日それの繰り返しで、どの答案も未完成の穴空きパズルのままで提出した。 んー。終わったかも。 …いろんな意味で。 赤点はまず間違いないとして、問題は追試だ。 放課後の貴重な時間を割かれると部活が……、って、たまにはいいか。 バスケも練習も好きやけど、実は、ここ最近、夢中にまではなってへんのよ。 だからなんて言うか……。 夢中になれる何かが欲しい。 それから何日かが過ぎた、ある日。 昼休みに購買へ行こうと席を立ったら、 「米倉ー、お客さん」 クラスメートに呼ばれた。 「やるな。なかなか可愛い子やん」 どうやら教室の外で俺を待ってるお客さんは女子らしく、そのクラスメート、石田にそんなことを言われる。 誰やろかとかなんとか、のんきに思いながら廊下に出てみたら、 「先輩、こんにちは」 石田の言うとおりに、可愛い子が立っていた。 「おお。なんや、木部ちゃんか」 廊下で待っていたのは部活の後輩で、部員の中でも小柄だけど可愛いと言われている子だった。 今日は部活がないから何事やろとか思ってたら、 「あの、先輩。いま時間あります?」 上目使いに、そんなことを聞いてくる。 「あるけど……、なに?」 「えと、ここではちょっと……」 クラスメートがわざとらしく『ヒューヒュー』と口笛じゃなくて口頭で囃し立てるなか、可愛い後輩に連れられて、屋上へと向かった。 prev|next 55/58ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |