犬小屋の鍵、貸します。
何度も貴方に恋をする

(3/8)

普通にお洒落にも興味があるから軽く茶髪にしてるし、ピアスホールもこっそり空けている。
走ってる時以外に邪魔になる長めの前髪はピンで止めてるから、真剣にバスケをやってるやつから見れば、俺は少しチャラい見た目をしてるかも。

それは最後の抵抗というか……、本気でやってくと決めたらやめるつもりやねんけどね。

せめてそれまでは、悩んでる間だけでも好きにやらせて欲しくて、顧問の津村先生はそれをわかってくれてるのかどうだか何も言って来ないから有り難い。

「あぢい」

滴り落ちる汗を軽く頭を振って吹き飛ばす。
飛沫が散ったそばから、再び汗がつつと頬を伝った。

まだ夏本番とは言えへんけど、梅雨の多湿を思えば仕方のないことなんだろう。
用意していたスポーツタオルを首に巻き付け、ボールを抱えて体育館を後にした。



只今の時刻は、予鈴が鳴る10分前ってとこ。
いつもだったら遅刻しても気にせえへんけど、テスト中の今はさすがにまずい。

ただでさえスポーツ枠で入学しただけに、成績の方は芳しくないし、赤点はまず免れられへんとしても、サボりでもしたら留年確定だ。
やから、できれば早く卒業したいから、一応はちゃんと受けとかなね。

教室に戻る前に部室に寄って制服に着替えて、マイボールをロッカーの中に投げ込んだ。
ネクタイを結ぼうかどうかで一瞬、悩んで、結局は制服のポケットの中に仕舞い込む。

うちの高校は進学校だからなのか夏でもネクタイ着用で、そのネクタイの色は学年ごとに決められている。
俺、このネクタイの締め付けが苦手やねんな。
やから、普段からあんまりネクタイはしない。

それも、俺のことをチャラいやつに見せてるんやろうなあと自覚はしつつ。
不良らしい不良はいない学校柄、結構、俺は目立ってる方なんだろう。

うちの学校は飛び抜けて悪い問題児もおらへんから、これといった校則もない。
それでも問題は起きへんからか、俺のかっこなんかも「きっちりせえ」って、厳重注意されるだけだ。

進学校のわりに自由な校風も気に入っている。
問題児や不良もおらへんから、この身長やら見た目で絡まれることもないし。

みなみや心斎橋を歩いてたら、結構、ちょこちょこ絡まれるのよ。
人より頭一つ分でかいから、それでなくとも目立ってるんやろね。

性格なんかは、至って普通で平凡やのにね。
まあ、ちょっとだけ、いきってみたいお年頃なんかも。


始業時間が近づいて、少し早足で教室へ戻る。
教室では、クラスメートが最後のあがきとばかりに教科書を広げていた。

いつもとは違う、テスト前の張り詰めた空気がうちが一応は進学校であることを思い出させる。

「おら、席につけー」

程なくして担任がやって来た。



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