犬小屋の鍵、貸します。 何度も貴方に恋をする (2/8) 女子より身長が低いなんて、けっこう屈辱的やん? しかも、子供の頃からずっと、事あるごとに比べられてきた美空より。 同い年だということで、俺たち双子は、子供の頃から何かにつけて比べられてきた。 特に男女の違いがあまりない時は同じように育てられたし、それは双子の宿命のようなものなんだろう。 今でこそ40センチも身長差ができてしもたけど、子供の頃の俺たちは一卵性の双子に間違われるほどそっくりだった。 バスケを始めて希望どおりに身長が伸び始めてからは、だんだん男女の差がはっきり見えてきたけど。 もう、ちびで泣き虫な俺やない。 ちゃんと前向きに歩いていける。 バスケのお陰で俺は変わったし、結構、偏差値の高い某高校にも進学できた。 スポーツの特別枠やけど。 高校二年生の今、そろそろ進路を決める岐路に立っている。 なのに、提出期限が過ぎた進路調査書はまだ俺の鞄に入ったままだ。 正直、このまま大学か実業団に進んでバスケを続けるか、バスケとは別の何かを見つけてやっていくかで迷っている。 小学生の頃からバスケ一筋にやってきたから、バスケ以外に何も知らない。 だから、バスケよりももっと楽しい何かがあるような気もして。 まだ人生の四分の一も生きてないのに、今、ここで将来を決めるとか無理がありすぎやろ。 手元でボールをつくと、いつも、ボンボンと腹に響く音と足元からびりびり響く振動に軽く身震いしてしまう。 これから始まる試合に対しての期待と不安にないまぜにされた気持ちを奮い立たせて、コートに立つ。 それは何にも増して心が踊る瞬間で、だけどそれをライフワークとするとなると勝手が違ってくる。 仕事になるとただ単純に好きだからやるだけじゃ済まされなくて、収入とスポンサーのためにやっている感も拭えなくて、今までやってきたバスケとは違ってくるだろう。 それが痛いほどにわかってるから、なんか中途半端なスタンスにおんねんな。 いまいち、バスケに集中できへんというか。 もしも本腰を入れてやってくなら、スタイルから何からそれらしくするつもり。 今の俺はスポーツマンというよりは、ちょっとだけ砕けた今風の高校生らしいかっこをしてるけど。 prev|next 52/58ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |