犬小屋の鍵、貸します。
何度も貴方に恋をする

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ゴールを決める瞬間がたまらなく好きだ。
早朝、誰もいない体育館でバスケットポストに向かい、狙いを定める。

一瞬、手元で溜めてから――、
シュート。

手を離れたボールは緩い弧を描き、的には当たらずに、直接、ゴールであるバスケットに吸い込まれた。






青い空と先輩と


テスト期間中の今は朝練をするやつも他におらんくて、こうやってコートを独り占めできる。
まあ、それでなくとも進学校のうちは、朝練をするような奇特なやつ自体、そうはおらへんのやけどね。

ただ、バスケットボール部だけは別だった。
府大会では負け知らず。
全国大会でも常連校で、いつも上位に食い込んでいる。

それでも、やはりテスト期間中だけはそちらに集中しているからか、俺のようなやつは他にはいなかった。

なんか、シュートした瞬間にカメラのシャッター音が聞こえたような気もしたけど……、まあ気のせいやろな。

ボールをしっかり両手で掴むように持ち替えて、一応はドリブルをしながらジグザグに進んでみる。
汗をかくこと自体は好きやから、その一人ぼっちの練習では無駄に思える動きも熟していく。

目の前に敵がおんねん。
やから、こう――、ね。

頭ん中で組み立てた敵チームのフォーメーションを打ち破るように、見えない敵を交わしていく。
ゴール下まで来たところで軽くジャンプしてバスケットにボールを押し込むと、バスケットゴールの枠にぶら下がった。


どーよ、今のん。
ちょっとだけかっこよかったんちゃう?

今のシュートはいわゆるダンクシュートというやつで、高校生では、そうできるやつはいない。
これも全部、この長身のお陰やねんな。

高二になった今でも伸び続けてる身長のお陰で、自分で言うのもなんやけど、今では全国的に見てもスター選手と呼ばれる選手にまで成長した俺。

バスケを始めたきっかけが身長を伸ばしたかったからやなんて、今の俺しか知らへん人間は微塵も思わないだろう。

バスケを始めたのは小学校の五年生の夏のことだ。
当時やってたのはミニバスケと呼ばれるもので、最初はチームの同級生の中で一番、背が低かった。

俺の双子の妹の美空が一足先に成長期に入り、俺より背が高くなってしまったのもきっかけの一つと言えるかも知れない。



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