犬小屋の鍵、貸します。
犬小屋の鍵、貸します。

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そこに俺が電車で一時間の距離から通学していることを知り、渡りに舟とばかりに二人暮らしを持ち掛けてきた米倉。
俺はと言えば米倉から犬小屋の鍵を借りてそこに移り住んだのに、一人で地団駄を踏んで、騒いで自滅すると言う失態を犯した。


すっかり雨も上がり、ファインダー越しに覗いた景色もなんとも言えない艶を帯びる。

「ねえ、律先輩」

手が届きそうな場所にある太陽を背負った米倉に腕を引いて起こされて、真正面からぎゅっと抱きしめられた。

「…あちい」
「うん」

米倉、それ。返事になってないから。

すっかり可愛くなってしまったわんこは俺に何度も好きだと言い、俺の肩越し、俺の首筋に顔を埋める。

「こら、わんこ。くすぐってえよ」
「うん」

またまた見当違いの返事をした米倉が、俺の首筋をかぷっと甘く噛んでくる。
瞬間、甘い香りが鼻孔をくすぐって、俺はゆっくりと目を閉じた。




もう、特殊なフィルターはいらない。
飾らない、そのままのわんこがいれば、それだけでいい。

犬小屋の鍵を再び手に入れた俺は、熱い唇を首筋に感じながら、この可愛いわんこをどうやって飼い馴らそうかと一人、思いを巡らせた。



ありがとうございました。
あとがき

2010/12/17/完結



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