犬小屋の鍵、貸します。 犬小屋の鍵、貸します。 (28/50) その日から雨の日も晴れの日も関係なく、俺たちは昼休みを一緒に過ごすようになった。 踊り場は埃(ほこり)とかび臭いこと、薄暗さが少し気になった。 だけど、晴れの日さえ俺たち以外が近寄らないそこに来る生徒はおらず、誰にも見つかることはない。 晴れの日は屋上へ。 雨の日は踊り場に続く階段の一番上に座り、俺は弁当を、米倉は購買の菓子パンを膝の上に広げた。 米倉の菓子パンは自作の菓子に取り代わることも多く、カップケーキや自作の菓子パンの日もあった。 「なんかあれですね」 「ん?」 「飯食う時だけは、ここじゃない方がええかも」 階段の一番上にちょこんと座って、ワンコはそんなことを言ってくる。 「確かにな」 「早く梅雨、明けへんかなあ」 独り言のようにそう言って、んー、と伸び上がるわんこ。 「まだ梅雨入りしたばかりだっつの。あと一ヶ月は雨ばっかだよ」 そう言うと、ちぇー、とまるで漫画のようにそう言って、体を後ろに倒して寝転んだ。 それからゆっくりと目を閉じた。 相変わらず米倉は、俺が好きだとか冗談のように言ってくる。 今では見慣れた茶髪や着崩した制服をちらりと見遣り、俺は壁際に身を倒す。 最初は自分のことをべらべらと、マシンガンのように喋り続けていた米倉。 最近はさすがにネタが尽きたのか、前ほど饒舌ではなくなった。 そのかわり、俺と同じにうたた寝するようになり。 それでも予鈴が鳴ると必ず俺の目は覚めるから、午後の授業に遅れるようなことはなかった。 そんな毎日で気づいたこと。 そんなチャラい見掛けをしているのに、実は結構、真面目な米倉。 勉強は苦手なくせに授業をサボることはまずないし、意外なことに、今まで皆勤賞なんだそうだ。 確かに『なんちゃらは風邪ひかない』とは言うけど、なんだか可笑しくて笑ってしまった。 甘いものが好きなくせに全く太らないし、それだけバスケの練習に明け暮れているんだろう。 prev|next 28/58ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |