犬小屋の鍵、貸します。
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「教室行ったら迷惑だろうし、屋上でおおてくれるって約束したから」

だから、雨の日も毎日ここ(踊り場)に来てたとほにゃっと笑うから、へなへなと、その場にへたれ込んでしまった。

「え、え。先輩、いける?」

ちなみに今、無駄に馬鹿でかいわんこは地べたに正座していたり。
顔を上げ、わたわたと慌てている米倉の顔を下から上目使いに軽く睨みながら、

「…ほんっとにおバカ」

呆れたようにそう言うと、

「うん。そうかも」

米倉はそれを認めて、今度はへらへらと笑った。






それからも梅雨らしく雨は降り続き、昼休み。
晴れの日は屋上で、雨の日はその薄暗くてかび臭い踊り場で、俺たちは昼休みを過ごすようになった。

「律先輩、これ食うてみて」
「なんだ?」
「カップケーキ」

米倉は相変わらず甘いものが好きで、たまにそうやって試作品を俺に食わせたがる。

「…ん。まずくはないな」

甘いものが苦手な俺用に甘さは控えめになっていて、悔しいことになかなか美味かった。

「よかった。あ。今日はなに撮ったん?」

一つだけ変わったことと言えば、俺が撮った写真を米倉に見せるようになったことだ。
いつも持ち歩いているデジタルカメラを米倉に見つかって、それから米倉にせがまれるままそうなった。

「あ。これいい」
「どれだ?」

意外なことに米倉も写真が好きなようで、撮ることは出来へんけど見るのは大好きだと目をきらきらさせながら、食い入るようにモニター画面に見入る。
ひとしきり写真を見終わった後、おもむろに顔を上げ、

「俺だけしか知らん先輩の秘密、もっと俺に教えてください」

その日、一番の笑顔を見せた。



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