犬小屋の鍵、貸します。 犬小屋の鍵、貸します。 (11/50) どんなに心が腐っていても、変わらず朝はやってくる。 「ん…」 今日もけたたましく鳴り響く目覚まし時計を二個まで止めて、仕方がないから勢いをつけてベッドから起き上がった。 これ。案外、いいかも。 寝ぼけながら二歩進み、デスクの上の目覚まし時計のアラームを止める。 この後にベッドに戻ればアウトなのがわかってるから、俺は目覚ましがてらにシャワーを浴びようと風呂場へと向かった。 朝が弱いのは、結構、致命傷かも。 できれば近場に引っ越したいけど、2LDKはどう考えても無駄過ぎる。 備え付けのベッドとデスク、本棚なんかがあるから空室とは言わないんだろうけど、使わない部屋があるのはどうかと思う。 特に友達が泊まりに来るでもなし、誰かと同棲……、じゃないな。 ルームシェアするでもなし。 学校の近くに手頃なワンルームのウィークリーマンションでもあったら、そちらに引っ越したいくらいなんだけど。 自室の本棚は、少しずつカメラ関連の専門書や写真集で埋まっていくだろう。 今までに親から買い与えられていた図鑑やら辞書、経営や不動産関連の専門書は全部、向こうに置いてきた。 今はまだその身一つに近い状態だけど、卒業までには生活感も感じられるようになるはずだ。 卒業後には嵯峨野関連以外の不動産を探したいけど、どうなるかはまだ自分にはわからない。 とにかく写真に関する知識や技術を身につけるのが先決で、本当の意味で勘当されるまでは臑をかじってやろうと思う。 軽く汗を流して頭からシャワーを浴びたついでで髪を洗うと、ようやく頭が冴えてきた。 昨日のことを出来るだけ思い出さないようにしながら、風呂場を出て髪を乾かした。 熱風を頭に浴びると再び眠気が戻ってきそうで、半乾きの状態で冷風に切り替える。 鏡の中を見て気がついた。 知らないうちに、結構、髪が伸びている。 半分、顔を隠す前髪はこのままで、少しだけ後ろを切った方がいいかも知れないな。 そんなことを思いながら、ブラック珈琲と食パン一枚の朝食を取る。 歯を磨いて制服に着替え、最後に伊達眼鏡を掛ける。 身支度が調ったところでカメラケースと学生鞄を抱えて家を出た。 いつもと変わらない時間、変わらない風景。 ただ、なぜだか憂鬱な気分のまま、一日が始まる。 prev|next 11/58ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |