SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL
伝えきれないラブソング

(4/5)

思い掛けず慧と真正面から見つめ合い、俺は腰を浮かした状態で固まってしまった。
惚けたような顔で慧を見つめる俺と、やけに真剣な顔の慧。

何故だか時間が止まってしまったような気がした。
やがて、スローモーションのように慧の顔がゆっくりと近づいて来る。

改めて慧が好きだと感じた。
特にこれと言った特徴のない、平均的な日本人顔のこの男が。

「…弓弦」

甘い吐息が耳に掛かってくらくらする。

「キスしていい?」

次の瞬間、俺の返事を待たずに、慧が俺の口を優しく塞いだ。



「……ふぁ」

うそ。なんで?
俺、慧とキスしてる。

キス自体は初めてじゃない。
ファーストキスは中学生の頃で、初めてできた彼女と経験済みだ。

「…んふっ」
「はぁ、弓弦……」

男同士も初めてじゃない。
正確に言えば俺の初キスの相手は親父で、物心がつかない子供の頃は挨拶代わりにキスをしていた。

「んんっ…」

頭の中までとろけてしまいそうだ。
てか、俺、なんで慧とキスしてんの?

キスしていいかと聞かれたけど、なんでこうなったのかが理解できない。


慧もキスしたことがあるのかな。
恋愛なんて興味なさそうなのに。

はっきり言って慧のキスはとても上手くて、頭の芯から痺れるような心地に目眩がする。



「ちょ、待っ…息ができな…」

息苦しさに思わず顔を背けたら、

「……あっ」

慧は俺の唇から自分の唇を離し、今度は俺の首筋に顔を埋めた。

慧、どうしてこんなことすんの?
もしかして慧も俺のこと……。


(――ちゅ、ちゅ)

仕切り直しするなら今しかない。
今度こそ、ちゃんと告白しよう。

「…慧、なんでこんなことすんの?」

その前にどうしても聞いておきたいことがあって、俺は俺のうなじに何度もキスしている慧に聞いてみた。
その声は、情けないほどとろけていてちょっと恥ずかしかったけど。

「え、だって俺たち恋人同士だろ?」

そしたら慧は、思い掛けないことを口にした。


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