SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL 伝えきれないラブソング (1/5) 「…ようやく手に入れた」 「―――っっ」 そう呟いて、慧はそのものを抱く腕に力を込めた。 慧の腕の中には俺…、じゃなくて、一本のヴィンテージギター。 Chapter1...現状 しかも、物凄く優しい目つきで見詰めながら、とても優しい手つきでその滑らかなボディー撫でている。 『弓弦、付き合って』 あの後、なんとか息を吹き返して何度も頷いた俺に、 『よかった。じゃあ、放課後。ジングルで』 事もなげに、慧はそう言った。 「なんだ、そう言うことか…」 「ん、弓弦?どうかした?」 もしかして、もしかしてだけど勘違いをしちゃったのだろうか。 俺ってば。 「あ、いや。よかったね」 「うん。ありがとう」 覚悟を決めて告白しようとした矢先に慧からの『付き合って』だったから、てっきり、その……。 俺の言いたいことを慧が代弁してくれたような気がしたのだ。 その日の放課後。 俺は慧に『付き合って』いつもの楽器屋にまでやってきた。 「これさ。お取り置きして貰ってたんだよ。やっとローンが終わって俺のものになったんだ」 弓弦に一番に見せたかったとそう言われたら、もう告白云々はどうでもいいやと思ってしまう。 慧が手にしているのは有名メーカーのカスタムギターで、中古ながら二年前で80万の値段がついていたものだ。 二年前、ローンと言ってもお取り置きにした慧は、全額払い終わった今日、ようやくそれを手に入れた。 …ま、いっか。 慧、めっさ嬉しそうだし。 高校生で80万は、それなりに高額の部類に入るだろう。 世界的に有名なメーカーのヴィンテージになると2000万だとかの世界で、100万はくだらないのだが。 「そっちは大学を卒業して、完全に独立してからだな。分不相応だし」 と、慧は笑った。 prev|next 54/58ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |