SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL
スタートライン

(28/28)

「はあ……」

頬を撫でる風は暖かで、ここに来てようやく春らしさを感じる。
今年は梅雨前線が北海道付近まで迫っているようで、生憎の曇天模様の空にも関わらず、俺の心は充実感に満たされていた。

「かっこよかったな…K」

自分も同じステージに立っていたことが信じられない。
ドロップ・アウトに自分が加わることで作り上げたSSRの初ライブは、絵に描いたような大成功を収めた。

初ライブが終わったのは昨日のことで、自分の中で本当のスタートラインに立てたような気がしていた。



「慧…遅いな」

いつもの昼休み。
屋上のフェンスにもたれて慧を待つ。
まだ少し手が痺れているように感じるこの感覚も、初ライブの余韻だと考えてもいいんだろうか。

初ライブを終え、新たなスタートラインに立った今、いろんなことが見えてきた。
一番、明確になったのは俺の慧に対する気持ち。

『最高……』

最後のアンコールを終えた瞬間、バンドマン仕様のKがそう呟いた。
その笑顔を見て自覚した。

俺、K…もとい。
慧が好きだ。



「ごめん!遅くなった!」
「!!」

そこへようやく慧の登場。
映画のワンシーンのように、屋上へと続くドアを蹴破る勢いで開けた慧。

肩で息をしながら、いつもの笑顔を向けてくる。

「あ…やっ、全然遅くない…っ!」

うわっ、なんかなまらはずい!
慧への想いを自覚したばっかだから。

「そうか…?って言うか、もう昼休み終わるし」

そう言って腕時計を覗き込む慧は、そんな俺の気持ちを知らない。




昼休みが終わるまで、あと5分にまで迫っていた。
どうやら慧は先に課題を終わらせて来たらしく、雲の切れ間から覗く空に目を細めた。

徐々に明るくなって行く空は、晴天を予感させる。



言わなきゃ。
慧が好きだって。
今を逃したら、一生言えない気がする。

幸い、初ライブの余韻でまだテンションも高めだ。




「慧、俺……っっ」

俺が勇気を出して絞り出したその一言に、

「弓弦、付き合って」

慧のそんな一言が重なった。



「え…?」
「いや?」

瞬間、心臓が止まってしまったような気がした…――。





Episode 2.
スタートライン



ありがとうございました。
Episode 3.へ続きます。

2015/05/12


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