SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL
スタートライン

(27/28)

どうしようもなく沸き上がる昂揚感。
どうしよう。
まだライブ前なのに。

俺はドロップ・アウト…いや。
SSRが好きで。
それ以前に、バンドが、音楽が好きで。

「おはよ。弓弦、早いね」

程なくして、ギターを抱えてやって来た慧がセッションに加わった。
特定の曲を演奏するでもなく、アドリブの応酬が曲になっていく。

いい感じ。
リハーサルにはまだ早いけど、取りあえずはウォーミングアップってところかな。


只今の時刻は、朝の10時過ぎ。
昼過ぎには、仕事を途中で切り上げた朗さんも合流することになっている。

心なしかいつもよりテンションの高い慧と二人、ぶっ通しでセッションを続けても、全く疲れは感じない。

『弓弦、いつもよりテンション高くない?』

マイク越しのその台詞、そのまま慧に返してやりたい。


小腹が空いた頃に一旦、切り上げて、親父の店で昼食を取った。

「おう、お疲れ」

それから何時間もしないうちに朗さんも到着して、軽いセッションの後、何度も今日のセットリストの確認(リハーサル)をする。

いつもよりテンションが高いのは朗さんも同じで、お互いに走り気味な自分達に苦笑う。

『ま、いっか』

元々がテンポのいい曲ばかりで、少しのテンポアップは問題ない。
走り過ぎないように注意しようとお互いに頷き合って、初ライブの通しリハーサルも終わる。

この瞬間に、柴田弓弦はSSRのドラマー、シバに。
海月慧はSSRのギター・ボーカル、Kに。
朗さんこと、進藤朗夢はSSRのベーシスト、シンに変わる。

どうやら客入りが始まったようで、店の方がざわつき始めた。
ステージの設営は親父と親父の音楽仲間がやってくれて、俺達はリハーサルに専念出来た。

「いよいよ、だな」

バンドマン仕様のKがウィッグの長い前髪を掻き上げて、マイクを通さず、いつもの、俺の大好き笑顔を見せる。

「最高のデビューライブにしようぜ」

イケメン度数が格段に上がった朗さん…じゃなかった。
シンはそう言って、俺達に向かってウインクしながら親指を立てる。


「そんじゃ、行きますか」

Kの少し間の抜けた一言を合図に、俺達、SSRは夢の一歩を踏み出した。


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