SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL スタートライン (20/28) 思わず慧の頭を撫でてしまったのは条件反射のようなもので、まさか男を膝枕する日が来るとは思わなかったんだから仕方ない。 「弓弦。顔真っ赤」 ぶはっと吹き出した慧はそう続け、外していた眼鏡を定位置にかけ直すと、いきなり俺の首に腕を回してきた。 ドキドキうるさい胸の鼓動。 「弓弦、彼女とそんなことやってるんだ」 「ち、違っ……」 違わなかったけど、思わず全力で否定してしまう。 いつかのように鼻先3センチ。 許容範囲を越えた近距離で、慧からまっすぐ見つめられる。 こんなの無理だ。 この状況で真っ赤にならないわけがない。 例え向かい合った相手が、自分と同性の男だったとしても。 あと少しだけ顔を近づけると鼻が、唇が触れてしまう。 そんな近距離に、目の前に自分の一番好きな人間がいるんだから、動揺しないはずがない。 「――っっ」 その距離がゆっくり近づいて、思わずぎゅっと目を閉じた。 その瞬間、慧がかけている眼鏡がかちりと俺の鼻先にぶつかる。 「ぶふっ。なんで目を閉じるの。ねえ弓弦、こっち見て。今すぐ目を開けないとキスするよ?」 耳元で甘く囁かれた言葉に慌てて目を開ければ、目の前にいつもの、俺が大好きな悪戯っ子のような笑顔――。 ――だめだ。死んだ。キュン死んだ。 絶対、今ので心臓が止まった。 こんなじゃ、命がいくつあっても足りないよ。 prev|next 45/58ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |