SEX,SCHOOL＆ROCK'N'-ROLL
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まあ、ね。
慧への特別な思いを自覚したからといって、俺たちの関係がどうなるでもないんだけれど。

「弓弦。ちょっと膝貸して」
「え、あ。ちょ……」

単細胞の俺は慧を直視できずにいるというのに、当の本人はいつものように飄々としている。


その日の昼休み。いつもの屋上。

ここに来るのもちょっと躊躇したけど、結局は今日もここまでやって来た。

慧が流したデマのお蔭で、屋上には今日も、俺たち以外は誰もいない。

俺に膝を貸してと言った慧は、いつものようにギターを傍らに置きながら眼鏡を外して、俺の膝を枕にその場に寝転がる。

このところ続いていた春雨のせいで久しぶりの野外。
慧はとても機嫌がいいようで、鼻歌を歌いながら気持ち良さそうに目を閉じた。



全国的に、梅雨入りを済ませた６月。
ここに来て梅雨のない北海道でも寒さも和らぎ、ようやく過ごしやすい気候になってきた。

まだ夏と言うには程遠いけれど、この屋上のように陽の当たる場所は、それなりに暖かい。

慧に膝を貸した俺はと言えば、今年初の汗をかいたりして…運動時以外で。

必要以上にかいてしまう汗や、いつもより少しだけ騒がしい胸の鼓動も夏のせいにした俺は、平常心を保とうとするけど、なかなか上手くいかない。

学校で慧と会えるのはこの場所、この時間だけだから、来らずにはいられなかった。

久しぶりの晴天のお蔭で野外に出られたことに、ホッと胸を撫で下ろす俺は、視線をさ迷わせて空を仰ぎ見る。

雨降りや屋上に出られない時は踊り場で慧と落ち合うんだけど、薄暗くて狭いあの場所で慧と二人切りになるのは、今の俺には、正直、やばい。

何かが口から飛び出しそうで。俺だけ緊張してるとか考えたらこっ恥ずかしいけど、慧を意識しすぎて、正直、どうしたらいいかがわからなかった。



頭上に広がる澄み渡った青い空。
その点、屋上に出れば開放感もある。

ふと視線を落とし、俺の膝でまどろんでいる慧を見下ろしていると、不思議と張り詰めていた緊張感が和らいで来るのを感じた。

「…ん？」
「あ。ご、ごめん！」

しまった。
あまりにも気持ち良そうだったから、思わず無意識に慧の頭を撫でちゃったよ。

俺が前髪を掻き分けるように慧の頭をそっと撫でたまさにその瞬間、慧がぱちりと目を開ける。

「弓弦？」

愛しいとか可愛いとか、そんなんじゃないのに。
目の前にいる慧はいつものように男前でかっこいいのに、無意識のその行動に、自分でも驚いた。

思わず、今までに何人かいた彼女にするようなことをしてしまった。
慣れっていうか、無意識の行動って怖い。

そんな俺をどう思ったのか、慧はのっそりと身を起こして、

「…ぶっ！」

俺の顔を見るなり盛大に吹き出した。


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