SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL
スタートライン

(18/28)

これってさ。
高橋が萌衣を思う気持ちと同じじゃね?

いや、さ。
慧のことを大事にしたいと思ったことは、今まで一度もないけど。

「あれから萌衣ちゃんとは会ってないし、ちょっと距離を置いてみた方がいいんかな」

大事にしたいだとか、されたいじゃなくて、慧のそばにいたいと言うか。

慧とともにありたいと思う。

「今までずっと追い掛けてたから、押してダメなら引いてみろっつかさ」

それはバンドのメンバーの一員としてじゃなく、その証拠に、朗さんはそんな感じじゃない。

朗さんともずっと一緒にバンドをやって行きたいとは思うけど、ずっと朗さんのそばにいたいという特別な感情はなかった。

つまりは俺にとって、慧は特別な存在に外(ほか)ならなくて。

それってつまり……。

「柴田。聞いてる?」
「うわっ!」

いろいろ考え込んでいたらいきなり高橋に肩を掴まれて、思わず大袈裟に反応してしまった。

「な、なんなんだよ。びっくりさせんなよ。……つか柴田。おまえ顔真っ赤だぞ」

高橋がそう言い切らないうちにタイミングよく予鈴が鳴る。



高橋は、まだぶつくさ言いながら自分の席に戻って行った。
予鈴が鳴って程なくして、本鈴前に担任が教室にやって来る。

「おらー、席に着けー」

簡単な連絡事項を聞いたあと、すぐに一時限目の授業が始まった。

つか、俺。
そんなに真っ赤な顔をしてるんかな。
ぱっと見で真っ赤だってわかるぐらいに。



SSRの初ライブを明日に控え、少々、浮足立っているのかも知れない。
だから本当はライブのことに集中しなくちゃいけないのに、俺の頭の中は慧のことでいっぱいだ。

何て言うか…あ。これ俺の口癖だな。うん。

日ごとに慧の存在が大きくなってくる。

「今日は23ページからな」

これって、もしかしてそうなんだろうか。
…いや、有り得んだろ。慧も俺も男だし。

ぐるぐるぐるぐる頭ん中でそんなことを考えては、頬が熱くなるのがわかった。

どうしよ、俺。もしかして。
慧に恋してるんかな。

つか……、

「こ、恋?!」

思わず奇声を上げて席を立つ。



「……あん?」

…しまった。今、授業中だよ。

担任の元ヤン教師が物凄い顔で俺のことを睨んでくる。

「こ、来いやバカヤロー!」

咄嗟に、某プロレスラーの物まねをしてごまかしたけど、大目玉を喰らってしまったことは言うまでもない。



柴田弓弦、もうすぐ18歳。

初ライブ前日のこの日、慧への特別な思いを自覚した。


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