SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL
スタートライン

(16/28)

自分の目の前で百面相している俺をどう思ったのか、

「…くくっ」

慧はそんな挙動不審の俺を見て、喉の奥で小さく含み笑った。



よくよく考えてみれば、俺と慧は同い年で、同じ高校に通っている。
実際に出会う前のKは俺にとって特別で、崇拝して止(や)まない、決して手が届かない対象だったけど、そんな慧がこうして目の前で笑っている。

「…ふっ」

手を伸ばさなくても、少し動けば体に触れることができる場所で。


背だって俺の方が少し高いし、体格だって、慧は俺より少し小柄なくらいだ。

だけど、決して一般的に言われているような男らしい見た目はしていないのに、慧は堪らなくかっこよくて、男前な性格をしている。

これって、惚れた欲目ってやつ?

とにかく、何故だか俺には、慧の全てがかっこよく見えて仕方なかった。




結局、その日も真夜中過ぎまでそんな風で、

「弓弦、美味かった。また明日」

日付が変わってしばらくした頃に、慧はそう言って帰って行った。

よそよそしいと言うか、最後の方は意識してこちらを見ないようにしていたように思えるのは俺の気のせいなんだろうか。

『弓弦』

慧が俺に話し掛ける時は、いつも最初に名前で呼び掛けてくる。

自分の名前のはずなのに、その響きがすごく優しくて、何故だか特別な名前のように聞こえて仕方ない。


そもそも、ドロップ・アウトに惚れ込んだのも、Kの歌がきっかけだった。
曲もいいし、ギターやベースも最高だけど、歌というより、Kの声そのものに惹かれたんだと思う。

だから慧から、弓弦って、名前を呼ばれるたび、なんとも言えない不思議な気分になる。
おまけに、慧はまるで口癖であるかのように、事あるごとに『弓弦』を連発するし。


その夜もなかなか寝付けなかった。
最近は、いつもそうだ。

頭の中を男前な慧が占領していて、慧を思えば思うほど、眠れなくなる。

「…寝、なきゃ」

SSRの初ライブまで、もう何日もない。


あと三回、寝て起きたら、俺たちの初めてのライブステージの幕が開ける。


prevnext

41/58ページ

PageList / List / TopPage

Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -