SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL
スタートライン

(11/28)

多分、高橋たちとは立ち位置が違ってしまったんだろう。
確か、横一列に並んで立ったスタートラインは同じだったはずなのに。

今、俺が立っている場所は、夢へと続く道の本当のスタートラインで、軽音のメンバーと立っていたのは、単なるバンド好きが集まる場所の目印に過ぎなかった。
慧と朗さんと立った本当のスタートラインをしっかりと踏み締めた今は、スタートの合図をただひたすら待っている。

みんなに知られないように、そっと小さな溜め息をついて見上げた空。
幾重にも走る飛行機雲が、つかの間の晴れ間を実感させた。




「じゃあな。柴田」
「今から練習だろ。がんばれよ」
「ん。さんきゅ」
「海月とシンさんに、またカラオケ行こうって伝えといて」
「また明日な」

阿部、坂東、千葉。そして高橋の4人と別れて校門を出る。
基本的に別行動をしている慧とは、一緒に下校したことがない。

「ちょっと遅くなったかな」

今日は朗さんの美容院が休みの日で、週一のこの日だけは、俺も慧もバイト先に休みをもらっている。
この日だけは、夕方の5時すぎから練習ができるから、帰宅する足が自然と早足になる。

別にここまで徹底しなくてもいいかもって、最近、特に思い始めた。
慧も俺もバイトがない時は、別に一緒に帰って練習してもいいんじゃないのかと。

けど、よくよく考えれば現地集合でも全く問題はなくて、わざわざ学校で待ち合わせてまで一緒に帰ることもない。

「…………」

そもそも学校では毎日、昼休みに屋上で顔を合わせている。
バンドの練習やらなんやらで放課後も毎日、俺んちで慧とは会っているんだし。


そう。慧とは毎日会っていた。
朗さんはともかく、慧とは学校の屋上に行けば必ず会える。

なのになんで、早く会いたいって、そう思うんだろう。
そんな自分の気持ちに戸惑った。


半ば駆け出すように、早足で帰るいつもの通学路。
早く慧の顔が見たいと、気ばかりが焦る。

少しずつ膨らんできたその思いに、この時の俺はまだ気づかずにいた。


prevnext

36/58ページ

PageList / List / TopPage

Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -