SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL
屋上をステージに

(25/25)

どうやらKはまたまた笑いのツボにはまってしまったようで、いつまでも笑っていた。
そんなKにドキドキしているのは俺だけのようで、朗さんは慣れた風に知らん顔で帰路を急ぐ。

「じゃあな」

駅へ向かう途中で朗さんと別れ、二人で歩く帰り道、

「あー、おかし」

いまだに笑っているKを横目で見ながら、何を喋ったらいいのかわからなくなった。

目の前にいる男は一緒にバンドをやっている男だけど、ずっと憧れていた男でもあり、こんなに近くにKを感じてドキドキしないはずがない。

「弓弦」

不意に真剣な顔のKに呼ばれて、思わず息を詰めた。
例のトイレで再び変身を済ませた等身大の男、海月慧が俺を真っすぐ見つめている。

「SSR。いいバンドにしような」

破顔一笑。
にししと笑った拍子に、少し釣り目で小さな狐目がなくなった。
その顔を見て何故だか少しホッとする。

がたがたで隙間だらけのすきっ歯、そばかすが散るだんごっ鼻。
目の前の男は決してモテるような容姿はしていないのに、どうしてこんなにかっこいいんだろう。

「うん」

そう返事するのに精一杯で、そんな俺を見て、

「……ふっ」

慧はいつものように静かに笑う。



俺の脳裏に浮かんでいたのは、あの日のカラオケルーム、こちらに向けた少し猫背な背中。
ドロップ・アウトのライブシーンじゃなくて、何故だかあの日以降の慧の姿だ。

学校の屋上で居眠りをする慧。
その傍らに転がる眼鏡とギターが、俺たちの未来を暗示させた。


俺たちの学校の屋上をステージに、俺と慧の、ついでにシンこと朗さんの。
SSRの物語が始まる。



ありがとうございました。
あとがき

2011/04/09/完結


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