SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL
屋上をステージに

(19/25)

取りあえず、見た目には来た時と同じな俺は、

「じゃ、行こっか」

そんな慧の後ろを追う。
ひとしきり笑った慧はもう気が済んだのか、いつものどこか飄々とした慧だ。

「え。どこへ」
「Kに変身しに」

そう言えば今日は慧も髪を切ってもらっていたけど、今はまだ学校バージョンの慧だ。
バンドの練習でスタジオ入りする時はいつも既にバンド仕様なんだけど、今日はもしかして、俺を待っていてくれたんだろうか。

そういやどこで変身してんだろうと、ふと疑問に思う。
相変わらず無言で無表情の慧は、どうやら学校近くの最寄駅へと向かっているようだ。

「ここ」

駅構内の外れにある人気の少ないトイレの前で足を止めて、慧はそこを指差した。



「ここ?」
「そ」

日曜日だから人出もそれなりに、駅も人出でごった返している。
そんななか、このトイレはどうやら穴場のようで、俺自身もこのトイレの存在を知らなかった。

普段、みんなが使っているトイレは駅構内の改札近くの飲食店のそばにあり、このトイレはコインロッカーの奥にある。
いくつも並んだコインロッカーに隠されているけど、見た目には改札近くのトイレよりも真新しい。

トイレの近くにはエレベーターがあって、どうやら駅ビルに入っている企業や各種店舗の従業員が主に使っているようだ。
通勤時間帯を避けると誰かに出くわすことはなく、日曜日の昼下がりである今も当然、人気はない。

中に入ってみると男子便所にも大きな化粧スペースとも言えるような洗面所があり、個室も余裕があって広かった。
トイレに入る前に、慧は一つのコインロッカーを開ける。

そこはゴルフセットなんかも入るような少し縦長に大きなロッカーで、慧は、ギターと着替えをそこに置いていた。

このコインロッカーもトイレ同様に人気がない。
なるほど、これなら誰にも気兼ねしないで変身できるってわけか。

洗面所で俺は朗さんに調整してもらったヅラを取り、初めてバンド仕様に変身してみた。
軽く髪型を整えてから、長めの前髪で顔を隠してみる。

うん。確かに、これならいつものチャラい金髪に近い茶髪ほどは目立たないな。
Kと一緒にステージに立ったとしても、Kより注目されることもないはずだ。

前髪を弄って、それなりに整えていると個室を開ける音がして、バンド仕様の慧……、もとい。
Kが目の前に現れた。


prevnext

19/58ページ

PageList / List / TopPage

Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -