SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL 屋上をステージに (13/25) 憧れや尊敬がますます強くなる。 話せば話すほど、Kに強く惹かれていく。 そんな俺を変なやつだと思っているのかどうだか、さっきからずっとKは笑いっ放しだ。 「それさ。新しいお洒落?」 それから、俺の顔。 特に上ら辺を見ながら、そんなことを言ってくる。 「へ?」 次の瞬間、罰ゲームで前髪をちょんまげに結っていたことを不意に思い出した。 「あ!」 うわー、やっちゃったよ。 俺ってば。 「これはその、好きでやってるんじゃなくて。罰ゲームで仕方なく……」 慌てて弁解する俺に、Kはひとしきり笑って、 「柴田は案外、普通なのな」 再びアコギを抱えながら、そんなことを言ってくる。 「安心した。ただチャラいだけじゃなくて」 そんな微妙に酷いことを言われてるのに、とてつもなく嬉しいんだけど。 なんて言うのかな。 こうやって知り合ったKにもっと近づきたくて、Kをもっと知りたくて。 そんな馬鹿なことを考えていたら、 「なあ、柴田。おまえのこと、弓弦って呼んでいい?」 ギターから顔を上げたKにそんなことを言われた。 「あ、うん。もちろん!」 「さんきゅ。それからさ。弓弦が呼んでる『ケイ』って、ドロップ・アウトの『K』だよな?」 続けてそんなことを言われたけど、おバカな俺にはKが言ったその意味が理解できなくて。 「学校とかバンド以外ではさ。本名の海月慧の『慧』で呼んでくれねえ?」 それからKは『訳わかんないけどさ』と続けながら照れ笑った。 その日は結局、昼休みをそうやって二人で過ごした。 音楽の話をしてみると思いの外、気が合って驚いた。 洋楽、邦楽ともに好きなバンドはほぼ一緒だし、音楽に関する考え方なんかもよく似ていて、K……、じゃないな。 慧と話すのは、とても楽しかった。 慧と話をしていると俺と同じ高校生なんだってことを、今更ながらに実感する。 等身大の慧に触れるたび、慧を知るたび、強く強く惹かれていく。 その気持ちに特別な意味があることに、その時の俺は気付かなかった。 prev|next 13/58ページ PageList / List / TopPage Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved. |