SEX,SCHOOL&ROCK'N'-ROLL
屋上をステージに

(9/25)

うちの学校の屋上にはちょっとした噂があって、普段から一般生徒はおろか、不良たちでさえあまり寄り付かない。
それはいわゆる学校の七不思議の一つで、トイレの花子さんのような、言ってみれば学校の怪談のようなものだ。

うちの学校はもともとは共学校で、十年程前に男子校へと移行している。
どうやら過去に失恋して屋上から飛び降りた女子生徒がいたらしく、屋上に長時間いると彼女のその時の心情と共鳴してしまうのか、何故だか、フェンスを乗り越えて飛び降りたい衝動に駆られるんだそうだ。

そんな噂もあり、屋上は、一人になるには持って来いの場所だろう。
それに、長時間そこにいなければいいだけの話で……、って、この話も単なる噂話に過ぎないんだけどさ。

その証拠に、俺が一年生の頃に三年生の先輩に聞いてみたら、そんな噂話は聞いたことがないと言っていた。
なのに、いつの間にかその話は定着してしまい、今では、誰も足を踏み入れず、たまにこっそり告白する(!!)場所となったのだ。

どうやら自殺した彼女は音楽が好きだったようで、音楽が聞こえて来たらやばいとかなんとか。
さらには、その音楽に引き込まれるようにフェンスを乗り越えてしまうとか。

よくよく考えれば嘘くささ満点なのに、屋上へ続くドアを開けた瞬間に、どこからともなく音楽が聞こえてきて、慌てて逃げ帰ったやつもいるらしい。

そんな馬鹿なことが……、そう思いながら踊り場から屋上へと続くドアを開けたら、

「―――っっ!」

思い掛けず、静かな物悲しい音楽が聞こえてきた。



(えっ、嘘っっ。マジ?!)

そう思ったのはほんの一瞬で、聞こえて来た音に自分の耳を疑った。

(…これ……、昨日、カラオケで聞いた曲だ。Kが一人で弾き語ってた曲)

耳に入って来たのは、アコースティックギターの優しい旋律とぎゅっと胸を締め付けられるような、柔らかで物悲しい歌声。

こんな偶然があっていいんだろうか。
どうやらKらしい人物は、こちらに背中を向けて歌っているらしい。

足音を忍ばせ、そっと近づいて、

「…K?」

そう問い掛けると、ゆっくり振り返る背中。

「え」

目の前で初めて真正面から見たKは、思い掛けないやつだった。


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