恋人ぷれい
はじめてづくしのエトセトラ

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壱人が俺に聞いてきた『いいか』は、ただ単に俺に気持ちいいかと聞いているだけじゃなくて、最後までしてもいいかと言う意味も含まれているんだろう。
ここに来てようやく壱人の愛撫の手が緩んで、俺は大きな吐息を一つついて、乱れた呼吸を整えた。

壱人は人が嫌がることは絶対にしないやつだから、俺の返事を待ってくれているんだろう。
ちゃんと確認するなら今しかないと、ちょっと……、つか。
かなりこっ恥ずかしいけど、覚悟を決める。

「あのさ」
「ん?」
「その……、もしかして俺が犯られんの?」

思い切って聞いてみたら長い沈黙の後、

「……は?」

壱人が完全に固まった。



再び降り出した雨が少し強くなったようで、窓を叩く雨音だけが耳に届く。
鳩が豆鉄砲を喰らっただとかのレベルじゃなかった。
完全に固まった壱人は、俺にかぶさったまま目を見開いて、俺のことを見下ろしてくる。

「あ、と。えーと……」

俺には腐男子的なそれだけど、一応は男同士のセックスについての知識はある。
その知識が全面的に正しいことじゃないのもわかってるつもりだけど、いざとなったら腰が引けてしまう。

それより何より、この状況はどう見ても俺が受けている側だ。
ベーコンレタス的なあれで言っても、俺が受けキャラだっていうのも一応は納得いくんだけどさ。

壱人のことを好きな自覚はあった癖に、こんな展開になることを想定してはいなかった。
よくよく考えてみれば当然のことで、両思いになった恋人たちが取る行動としては、当たり前のことなのに。

まあその……、俺たちはまだ恋人同士でもなんでもないんだけどさ。



「なに。泉。挿れたいの?」

不意に壱人にそう聞かれて胸が跳ねた。
いきなり核心を突かれて、思わず言葉に詰まってしまう。

男同士のセックスは全てが挿入を伴うわけじゃないのは知ってるけど、挿入が伴う場合は、当然のように役割が決まってくる。
どちらも男なんだから、突っ込みたいと思うのは当然の欲求で、でも正直、俺は壱人に対しては、突っ込みたいと言う願望があるわけでもなかった。

ずっと壱人のことが好きだった癖に、俺はいつかは童貞を捨てることしか考えてなかった。
そのくせ、壱人とは一つになりたい願望もあって、でもそれは、下世話な言い方だと、壱人に突っ込んでヒーヒー泣かせたいわけじゃない。

だとしたら答えは一つ。

「俺は挿れたい」

そう言われて、

「…初めてなんだから絶対に痛くすんなよ」

覚悟は決まった。


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