腐男子プレイ
[3/35]
「…来たこれ。嫉妬フラグ」
「……は?」
結木さんの嗜好を考えると、二人の会話にはちょっとした不安もあるけど、結構、気が合ってると……、ん?
「おまえら。いい加減、頭上で喧嘩するのはやめてくれ」
なんとなく結木さんを見れば腐女子の顔に変わっていて、俺は慌てて、イヤホンを外して二人の会話を止めた。
「……はあ。おまえらいったいどんな話をしてたんだよ」
「別にー。ね、橋本くん?」
「――っっ」
まあ、聞かなくてもわかるけどね。
結木さんが俺のことに関して、あることないこと難癖をつけて、橋本をからかったんだろう。
あーあ、可哀相に。
目の前の橋本はそんなことを言われて、
「便所っ!」
そう言い捨てると、真っ赤なをしたまま、休み時間が終わる直前の教室を出て行った。
どうやら、結木さんの方が橋本より一枚上手(うわて)だったようで、つまりは橋本は尻尾(しっぽ)を巻いて一目散に逃げ出したことになるのか。
「頼むからあんまり橋本を虐めないでよ。いいやつなんだからさ」
「や。ごめんごめん。つい、ね」
頭をぽりぽりと掻きながら、結木さんはそう言うと、
「ね。橋本くんのこと好き?」
唐突にそんなことを聞いてきた。
「好きだよ。いいやつだしさ」
おそらくは台詞の後半をなかったことにしたんだろう。そう言いながら、結木さんを見遣れば、彼女は真っ赤な顔でバンバン机を叩いていた。
なんというか、これが腐女子と腐男子の大きな違いなんだよな。
結木さんと話したり観察していると、いつもそれを実感する。
腐男子で一応はノンケであるはずの俺は二次元には萌えるけど、いわゆるナマモノと呼ばれる三次元では妄想できない。
何しろ俺、自身が男なんだから、実在する男と男がなんちゃらとかは全く考えられない。
いや、違うな。
自分自身が男と付き合っているから同性愛については偏見もクソもないけど、実在する同性愛者じゃない男をカップリングしたり、その男で妄想することができない。
多分、性格的なこともあるんだろうけど、俺には実際の友達だとかで考えるのは絶対に無理だ。
例えば、俺と壱人みたいに本物のカップルが身近にいたら、そいつらで、ある程度は想像もできるんだろうけど。
Bkm
prev|next
89/133ページ
PageList / List / TopPage
Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.