カーテンの向こう側
[28/28]
相変わらず口はぽかんと開けたまま。
どうやら俺の言ってる意味がわかったようだが、それに対する泉からの返事はない。
ってか、俺。思わず告っちゃったよ。
「…決定的に胸のボリュームが違うんだけど」
「うん。それだけが不満だった。俺、貧乳の方が好きだから」
泉。つまりはお前のことだよ。
業（ごう）を煮やした俺は真っ赤な顔でぶつぶつ文句を言っている泉をよそに、おどけたようにそう言って、そのどさくさに紛れて泉の服の中をまさぐった。
「…ちょ、ばっ。やっ、やめっ」「ごめん。無理」
ここに来て、暴走し始めた気持ちは制御が効かない。
きつく泉を抱きしめて、泉が着ていたＴシャツを剥ぎ取った。
つか、俺。なんでこの部屋に来たんだっけ。
ふと冷静になって泉を見ると、そのダシに使った傘をしっかりと握っている。
俺からの告白に泉からの返事はなかったけれど、抵抗もせず、俺を受け入れてくれたのが泉からの返事なんだろう。
勝手にそう解釈した俺は、泉を抱く腕に力を込める。
「…んっ。んんっ」
泉にキスの雨を浴びせながら、カーテンを開け放った窓の向こうを眺めた。
窓の向こうに見えるのは、同じくカーテンを開け放った、一番弱い明かりが点った俺の部屋。
もう二度と鎖されることがない二人だけの道が再び通じたことに、喜びを隠せない。
これからは、いつでも来たくなったら、庇を伝ってここまで来れる。
泉の声が子猫の鳴き声のような声に変わったのを合図に、俺は長年の念（おも）いを遂げた。
さあ、始まりだ。
明日からは楽しい毎日が待っている。
ありがとうございました。
あとがき
2011/03/07/完結
Bkm
prev｜next
86/133ページ
PageList / List / TopPage
Copyright © 2010 さよならルーレット Inc. All Rights Reserved.