カーテンの向こう側
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これって絶対、誘ってるよな。
なんて、自分勝手にそんなことを思いながら、ちょいちょいと人差し指で泉を呼んだ。
俺に呼ばれ、身を乗り出してきた泉をそのまま真正面からぎゅっと抱きすくめる。
「…俺と泉ってさ。共通の話題がないじゃん」
泉を避けてきた理由をどう言い繕(つくろ)うか散々、迷って、
「だから、なんて話し掛けようかって思ってるうちに、きっかけを失っちまって」
そんな風に切り出した。
久しぶりに見た泉は相変わらず普通の男なのに、なんでこんなに胸が騒ぐんだろう。
さっきの言葉に続けて、
「それが泉に話し掛けられなくなった理由」
そう付け足して本当の理由をごまかしたけど、それも理由の一つだから、少なくとも嘘はついてない。
泉の腋(わき)に手を入れて持ち上げると、俺の腰の上に向かい合わせに跨ぐように座らせた。
間近で見る泉は本当に普通で平凡な男なのに、なぜだか可愛く見えて仕方がない。
思えば子供の頃は一緒の布団で寝たこともあったけど、ここまで密着したことはなかった。
泉の存在を体の前面に感じながら、泉を抱く腕に力を込める。
「泉、好きだ」
思わず本音が漏れた。
…ってか、キスした後だから順番が逆か。
泉がどんなリアクションを取るかと身構えていたら、
「…壱人、彼女いるじゃん」
少し淋しそうにそんなことを言ってくる。
抵抗しないどころか、拗ねた様子で、そんなことを言ってくる泉に思わず顔が綻んだ。
自分が泉に好かれていると思った考えは勘違いじゃなく、しかも、この展開を考えれば、俺も恋愛の意味で泉に好かれていて、今の台詞は泉の嫉妬だと踏んだからだ。
「関係ないよ。泉の代わりだから」
慌ててそう言い繕いながら泉の耳に唇を寄せれば、くすぐったそうに身をよじる泉が可愛くて、
「泉に似た女ばかりを選んでたからな」
そんな余計なことを口にしてしまった。
気持ち悪がられないように『雰囲気だとか笑った顔が』だとかなんとか適当に付け加えながら、泉のご機嫌を取る。
「…けどさ。今度の結木さんは美人じゃん。しかも巨乳で」
そしたら泉はそう言うと、おそらくは無意識に、俺のシャツの裾をきゅっと掴んだ。
Bkm
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