カーテンの向こう側
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なんで俺、こんなやつのためにずっと悩んで、しかも我慢なんかしてきたんだろ。
そう思ったら、なんだか気が抜けてしまった。
目の前の泉は、特に顔が可愛いとかじゃなくて、至って普通で、しかも、どこにでもいるような平凡な男だ。
泉の上に馬乗りになって冷静に考えると、不意にそんな自分が馬鹿らしく思えた。
俺がこうやって散々悩んでいたことも知らないで、何で橋本と笑い合ってるんだよ。
そんな自分勝手な思いが沸き上がる。
よくよく考えれば自分の部屋からこの部屋までは数分も掛からない。
そんな近くに、手を伸ばせば届く距離に泉はいた。
ただ、閉め切ったカーテンを開けるだけで、そのカーテンの向こう側に泉はいたんだ。
もっと早く自分の気持ちを認めていたら、こんなにこじれることもなかったんだと思うと無償に自分に腹が立つ。
「ああ、くそっ。なんでこうなるんだよ」
泉のせいにしていた自分が情けなくてそう独りごち、ベッドに引き倒した泉を真正面から抱きすくめた。
俺に抱きしめられた泉は抵抗することなく、それどころか、そっと俺の背中に手を添えてくる。
その行動に嫌われてはいないことを覚って、心からホッとした。
久しぶりに直接感じる体温にも安心するとか、泉を突き放そうとしていたくせに、俺はどれだけ泉に依存していたんだか。
自分にそうツッコミを入れながら、泉を抱く腕に力を込めた。
(…ああ。泉のにおいだ)
そんな変態チックなことを思いながら、今まで、どれだけ泉に触れたかったのかを思い知る。
想いが暴走するのが怖いとかは思春期特有の性質のせいにした言い訳で、本当はずっとこうしたかった。
泉をこうして抱きしめ、名前を呼びたかった。
「……てんだよ」
なのに泉のやつ、橋本に名前を呼ばせるとか。
そんな自分勝手な思いが俺の胸を締め付ける。
泉を真正面から抱きすくめたまま、
「ああ、くそっ。なに、他のやつに名前で呼ばせてんだよ」
そう独りごちるよう吐き捨てると、どうやらくすぐったかったのか、泉の体がぴくりと跳ねた。
Bkm
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