幼なじみプレイ
カーテンの向こう側

[19/28]
それから何日かは、地獄のような日々が続いた。
地獄との例えは些か大袈裟だが、針の筵(むしろ)に座らされた心地がしたのだから似たようなものだ。

『泉』

当たり前のように自分のことを名前で呼ぶ橋本に、泉は笑顔で応える。
その笑顔は、友情で結ばれた二人の間でのことだとわかりきっているのに、ただ嫉妬で胸が痛かった。


いつものように通学して、泉と橋本の目の前の席に座る。
こうやって、わざと二人の目につくようにすることは、もはや意地のようなものだ。

こうでもしないと泉の視界に入らないことが悲しかったが、これも自業自得なのだから仕方ない。
ちゃんと自覚していても、やめられなかった。

今日も橋本は一時限だけ補習を受けて、部活へと向かった。
その後、ちらちらと泉がこちらを見て、何か言いたそうな顔をしているのが気になったけれど、気にしないそぶりを決め込んだ。

浮ついた心を覚られないように、必要以上に、結木には優しくした。
そんな俺を結木は、どう思っているのだろう。

後になって気づくことだが、結木はこの頃には、俺の本心に気づていたのかも知れない。


その日は久しぶりにぐずついた天気で、泉があの傘を返す名目で話し掛けてくることを期待したのだが。
結局、泉はいつものビニール傘を持って登校していて、傘を返しに来る気配も見られない。


本当に何をしているんだ俺は。
何がしたいんだよ。

全ての補習授業が終わった放課後、いつものように自問していたら、

「泉ー!」

窓の外、階下から泉を呼ぶ馬鹿でかい声が聞こえた。


一瞬、胸が跳ねた。
野球の練習は終わったのだろう。

階下から橋本が窓を閉めようとしていた泉を呼び止め、泉は窓から身を乗り出して、階下の橋本と話し始める。

『…――――』
「うん」
『…――――』

橋本の声は聞こえないが、おそらくは一緒に帰ろうとでも泉を誘っているんだろう。
何度も相槌を打ち、

「おお。待っ……」
(――――バンッ!)

泉が口を開いた瞬間に、俺は机を思い切り叩いて席を立った。

Bkm

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