カーテンの向こう側
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泉の場合、女顔といっても結木のように特別に美人なわけでもなく、それでも、どこにでもいそうな普通の可愛さがやばい。
しかも、幼なじみとしてもう十年も一番そばにいるし、泉の良い所も悪い所も全部知ってしまった。
悪い所も含めた全てが泉で、その全てが愛しかった。
それは泉が泉だからで、例え泉が女でも普通に好きになっただろうし、言い換えれば泉が自分と同性の男であろうが、そんなことは泉を想う気持ちには全く関係なかった。
「…でね。壱人、聞いてる?」
「ああ」
そんな泉が例え恋愛感情は全くないとしても、俺とは違うやつと笑い合っている。
教壇の真ん前に好んで座っているのは、そんな二人を見たくはないからだ。
結木といつものように取り留めのない話をしていると、不意に後方から泉の名前が聞こえた。
「うわ。米倉って泉ちゃんなんだ」
「…悪いかよ」
「や、全然。ってか、これから泉って呼んでいい?」
その瞬間、
「――――っっ!」
「壱人?」
一瞬、立ち上がって橋本の胸倉を掴みたい衝動に駆られた。
泉は名字で呼ばれることが大半で、泉を下の名前を呼ぶのは今のところは俺だけだ。
なのに、
「いいよ」
泉はいとも簡単に承諾してしまい、橋本は泉のことを今までのように名字の『米倉』じゃなく、下の名前の『泉』で呼ぶようになった。
Bkm
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