カーテンの向こう側
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どうして俺は、素直になれないんだろう。
少なからず、泉から好かれている自信はある。
ただ、その想いが自分と同じかどうかだけが問題で、俺は泉のことを抱きたいと思っていた。
そういった意味も含めての『好き』なのだが、泉のそれはまた違う意味のものだろう。
多分、泉に想いを伝えたら最後、きっとそれからの歯止めが効かなくなる。
同性愛がどうとか世間体がどうとか以前の問題で、暴走して、泉を壊してしまうことがただ怖かった。
「…あ、うんんっっ」
泉の身代わりになら、なんでもできるのに。
きつく抱いて激しく揺さぶれば、結木は甘い吐息を漏らした。
「――泉っっ」
その名前を呼んで乱暴に抱けば抱くほど、泉、本人が欲しくなる。
「ああっ、壱人っ！」
当然、俺の名前を呼ぶその声が泉とは違って、一瞬、現実に戻される。
『橋本』
今日一日、泉が誰かの名前を呼んだのを聞いたのは、その忌ま忌ましい名前だけだ。
そう仕向けたのは自分だと自覚しているのに、どうにかなってしまいそうだった。
今日も俺の部屋は、しっかりとカーテンを閉めている。
きっと、泉の部屋も同じだろう。
一応は、結木と付き合っているのだ。結木を一番に思うのが当たり前だ。
なのに、やはり泉が一番で……。
泉を一心に思いながら結木と付き合う自分と、結木と付き合いながら泉を一心に思う自分。
どちらも浮ついた気持ちに違いない。
こんな風に、意図的に泉を遠ざけるようになって、もう５年になる。
泉を想う気持ちが、単なる幼なじみとは違うことに気付いてから、それまでどおりにはいられなくなってしまった。
『壱人』
それでも、泉は変わらず接してくれていたのに。
やはり昨日、泉に貸した傘がきっかけになったのか、ぼんやりとそんなことを思った俺だった。
Bkm
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