カーテンの向こう側
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閉ざした窓
どんなに心が荒(すさ)んでいようが、変わらず朝はやってくる。
「――朝、か」
朝一番に無意識に零れ落ちた声は、自分でも驚くほどに掠(かす)れていた。
昨日、女を家に呼んで、散々やりまくったからだろうか。
だが、半ば悲鳴のような嬌声を上げていたのは女の方だ。
俺は荒い息をただ漏らしていただけ。
それでも昨日から喉が少し痛かったような気がする。
効きすぎたクーラーのせいで、風邪を引いてしまったのかも知れない。
まだ動かない頭で、それでもぼんやりとそんなことを思いながら窓際に寄りカーテンを開ける。
窓の向こうに見えるのは、しっかりと閉ざされた窓を覆い隠す青いカーテン。
いつの間にか日課になった一連の動作に苦笑い、一度、開け放った自室のカーテンを再び閉ざした。
自室の窓は鍵もしっかりとロックしてある。
この窓は、女との行為の後に消臭する時とたまに掃除する時以外に開放することはない。
あの頃の甘く苦しい感情を遮断するためだったとは言え、今は後悔している。
かと言って、今となってはどうしようもないのだけれど。
徐々に覚醒してきた頭を持ち上げ、本格的にベッドから下りる。
しんと静まり返る室内に微かに目覚まし時計のけたたましいアラーム音が聞こえて、その音についつい苦笑ってしまった。
俺の愛しい人は、相変わらず朝が弱いらしい。
しばらくその音が続いていたが、やがてぴたりと止まった。
時計の針を見ると結構いい時間で、カーテンの向こう側の状況が気になって仕方ない。
「壱人、早く!」
「……っとに、おまえが寝坊したからだろうが」
「――っっ、そうだけどっ」
そう軽く拗(す)ねながら俺の上着の裾を引っ張る腕を掴んで、
「ほら、走るぞ」
なんて、青春していたのは随分と昔のこと。
子供の頃は良かった。
何も考えなくてよかったから。
いつも隣にいる幼なじみのことが大好きで、そいつがいるのが当たり前で。
思春期になり、その気持ちに邪(よこしま)な思いが入り混じるようになったのに気付いてからは、その思いを押し殺すしかなかった。
Bkm
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