幼なじみプレイ
涙と猫と赤い傘

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今年は例年には見られないような猛暑日が続いていて、歩いているだけでも汗が吹き出してくる。
そんな中、首筋を流れ落ちる汗に顔をしかめながら駆け足で行く。

家を飛び出した時に本当のことを言うと、ちょっとだけ期待していた。
隣から同じようにあいつが遅刻すれすれに飛び出してきて、久しぶりに学校まで一緒に通学したりして……、なんて。

(……あ)

なのに現実は、少し前方に新しい彼女と仲良く通学する壱人の背中。
きゅっと唇を噛み締めて、そんな二人を足早に追い越した。


わかってるのに。
もう慣れ切っているはずなのに胸が痛い。

あいつに初めて彼女ができたのは、中学二年生の夏のことだ。
それからは取っ替え引っ換え彼女ができて、壱人に彼女が途切れたことはない。

それに引き換え、俺は彼女どころか誰とも付き合ったことも恋らしい恋をしたこともなくて、本当のことを言うと壱人のことをずっと一途に思っている。

なんて不毛な恋をしているんだろう。
つくづくそう思う。


二人を追い越す瞬間、壱人はちらりとこちらを見た。
なのに顔色一つ変えないで彼女と喋り続けて、俺は完全に無視された状態だった。

壱人も俺も帰宅部で、どこの部活にも入ってはいない。
だけど壱人は毎日デートやらなんやらで帰りが遅く、一日中、一言も喋らない日もざらだった。

壱人は俺のことなんかなんとも思っていない。そう考えれば仕方のないことだ。


駆け出すこと10分あまりで、なんとか遅刻せずに学校へ着いた。
後ろを振り返っても二人の姿は見えなくて、思いがけず猛スピードで走っていたことに気付く。

乱れた息を整えながら教室に向かう。
いつもの自分の教室、2年C組が壱人がいるD組との合同補習の教室だ。

「よう、米倉。おはよ」

教室に入った瞬間、教室の隅からそんな声が掛けられた。


「おはよ。橋本」

声を掛けてきたのは俺のクラスメートで、今のところは一番仲の良い友人だ。
昔は壱人がそうだったけど、今現在はこの橋本が親友といえるスタンスにいる。

補習授業の席順は決まっておらず、ちょうどど真ん中の俺の席の隣に橋本は座り、おいでおいでと手招きをして俺を呼んでいた。

Bkm

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